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カテゴリ:【本】図書館
小学校に併設されている施設、コミュニティハウス。
そこにある図書室には司書がいて、悩みを抱えた主人公は、その司書にすすめられた本を読んでいきます。
背表紙の下の部分には図書館のラベルを思わせるデザインがあって、お話の中に図書室が出てくるこの本とよく合っています。
『お探し物は図書室まで』 青山美智子 ポプラ社
確か「図書館」というキーワードで本を調べていた時に見つけた本だったと思います。
2020年11月に発行された本。
本の帯には、「2021年 本屋大賞 第2位」と書かれています。
とても人気がある本のようで、私が利用している図書館3ヵ所では、予約数がそれぞれ80~200件以上といずれも多数。
図書館で予約して順番待ちするより、買ったほうが明らかに早いので、書店で買ってきました。
ところがその書店、最初に行った店舗では、システム上では在庫が複数冊あるはずなのに、店員の方が2人がかりで探しても見つからず。
別の書店でも、やはりシステム上にはあるのに、該当する棚で見つけられず。 (ここでも店員の方に聞きたかったのですが、レジで忙しそうだったので聞けませんでした。)
そうした経緯の上で、ようやく見つけて買えた本。
読む前から期待値が高くなっていましたが、期待を裏切らず、素敵な本でした。
内容は、目次に書いてあるとおり
一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員
二章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部
三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者
四章 浩弥 三十歳 ニート
五章 正雄 六十五歳 定年退職
と、主人公が異なる5つのお話に分かれていて、それぞれのお話がゆるやかに繋がっています。
年齢も職業もバラバラな5人。 それぞれの書き分けが素晴らしいと思いました。
・目の前のことに、ひたむきに取り組むこと。
・「いつか」と思っていた、夢の先へ進むこと。
・受け入れられ、自分を活かせる、役に立てる居場所を見つけること。
・心が動くことに挑戦すること。
など、それぞれの主人公が前向きに進んでいく様子が書かれています。
私は、三章の夏美(40歳、元雑誌編集者)と、四章の浩弥(30歳、ニート)のお話が印象に残りました。
自分がやりたいことや、自分を活かせる場所について。 自分で自分の居場所を見つけていくということ。
お話の中では図書室の司書が、本の付録としてそれぞれの主人公に羊毛フェルトの作品を渡します。
作品だけでなく、この羊毛フェルトという存在自体が、人間の人生にもつながるのだと思いました。
というのも、以下のような司書の台詞があったからです。
「これ、作るときに型紙が要らないのがすごくいいの。こうでなくちゃいけないっていうのが決まってないんだよね」(p.79)
「羊毛フェルトのいいところって、途中から好きなようにやりなおせるっていうのもあるね。あるていど出来上がってきても、作ってるうちやっぱりこうしたいなって思ったら軌道修正がしやすくて」(p.140)
「これ、羊毛フェルトっていうんですけどね。どんな形にも、どんな大きさにもなるんですよ。いかようにも無限で、ここまで、というのはないの」(p.257)
私自身は羊毛フェルトを扱ったことがないのですが、他の方が作った作品画像をネットで見る限り、見本とかけ離れた作品も多くあるようです。 (それがまた面白く、本人たちも笑い話にしていらっしゃって、見ていて楽しいのですが。)
こうじゃなきゃいけない、ではなく、どんなふうにもできるということ。
自分の人生にしてみても、これからまだまだいろんな可能性があるんだよ、と教えてくれているようです。
そうした意味で、主人公5人の年齢が幅広いことも、悩みを抱える読者にとって大きな後押しになっていると思います。
読後は、温かく前向きな気持ちになります。
毎日だらだらと生き延びているだけの、引きこもり子なし専業主婦の私ですら心に響いた本なので、日頃から真面目にひたむきに生きている人なら、なおさら心に響くでしょう。
今いる環境に悩んでいる方、人生に迷いや悩みがある方にとっては、視野を広げ、そっと背中を押してくれる本だと思います。
1回読んで「あー、面白かった!」と手放すのではなく、何度も繰り返しじっくり読みたくなるような本でした。
また、以前読んだ本『司書のお仕事 お探しの本は何ですか?』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.10.11 20:08:45
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