ー機動戦士ガンダムMimesis(ミメシス)ーガンダムミュー 序章2
ー機動戦士ガンダムMimesis(ミメシス)ーガンダムミュー序章2この人物は、ジオン思想を信望する活動家として暗躍する反面、表向きは遺伝子、生物工学が専門分野の博士として知られている 特に植物の葉緑体の器官をはじめ、メタン菌、補酵素等の微生物、細胞組織の遺伝子操作は得意で、それらの細胞と電化作用を付加した 二酸化炭素分解と有毒物質除去、化学原料の生成等の技術にも定評があり、こうした研究の成果は、資源が著しく乏しく密閉され、限られた空間であるコロニーの内部で、かなりの業績を上げて評価されていた そんな彼ではあるが、ここまでの道のりの中には、アクシズでの経歴が目を引き、連邦政府から疎んじられた時期が存在するそれでも着実に評価されていく、これらの功績の数々は、人間の活動範囲が太陽系全体に広がりつつある中で、地球連邦政府内でも貴重な逸材として、その存在を知らしめる事となっていた しかし、ここへきて、政府によるレジスタンス活動の取り締まりが一掃厳しくなり、それらに手を出した者は、権威ある学者でさえも、法外な手段で罰せられ処刑されるようになった事から、いずれ、その身にも捜索の手が及ぶ事は明らかだった そうした状況の中で、自分の身の振り方を模索し考え喘いでいた彼に、ある開発業者からの協力の要請の話しが舞い込んでくる事となったこれは誰にも指図される事なく自然な運びで、厳しい監視下の地球圏から離れられる救いの手だった 彼はすぐに、その話しを承諾し、そして、1年7ヶ月に一度、惑星が地球に一番近づく会合周期の時期に合わせ荷物をまとめ向かった先は、地球から5千万キロ離れた金星領域だった 金星は火星や月に比べ劣悪で過酷な環境を持つ星で、400℃以上ある熱と90気圧にまで膨張した気体が存在し、 大気圏内には濃硫酸が雲となって存在しているさらに、極めて遅い自転速度によって、大地の半分は数十日にもわたって極端に熱せられており、地球では固体化しているはずの物質は気化し続け、気体の量が多い事と、大気温度が元々高い為にあまり変動が生じないように 感じるが、長い時間、日の光が動かない事で、日向と陰で大気の温度変動は劇的なもので、それによって生じる対流の流れは、大気圏内部で風速300メートルにもなる強い風となって吹き荒れる状態となっている 最初のテラフォーミング(居住環境整備)計画では、気圧の低下を狙った気体の採取が行なわれていたが、長い時間熱せられている物質からの気化が予想より早く、いたちごっこになってしまっていた事と、スペースコロニーに比べると莫大なコストがかかる上に、住環境整備が完了するまでに有する時間の予測が、困難であった事から計画が頓挫してしまっていたしかし、地球領域では、度重なる戦争で排出された機体の残骸が、宇宙ゴミとなって飛び交い、それぞれの物体の質量と引力の釣り合う時点で 漂っていたそして、数センチの金属の破片ですら、空気抵抗のない宇宙空間の中では、時速数百キロメートルの勢いをつけ、それらとぶつかった時の衝撃は驚異的なもので、残骸との衝突によってコロニーの側面は破損、著しく劣化する結果を招き、レーダーでの異物の監視やバリアーを維持出来るだけの予算を算出できない、貧困コロニーは補修の追いつかない状態に陥り、常に命の危険がつきまとうようになりそうした新たな問題の出現で、大地というモノの必要性を見直せざるおえなくなっていた しかし地球は連邦政府が占領する為に、コロニーの居住者を再び元へ戻す事は、まず間違いなく不可能だった そこで、、地球の重力とほぼ変わらないという立地条件と、地球と惑星間の航行時間が、VASIMR(比推力可変型磁気プラズマロケット)ジェット機で一週間ほどという利便性から、金星に対する環境整備の計画が再び、日の目を浴びる事になっていた この取り組みは、まだ初期段階ではあったものの、その開発の足場として、惑星から130万キロ離れたラグランジュポイントL2に、既に、20基ほどのコロニーと、水資源としてアステロイドベルトから運ばてきた、氷天体の小惑星が数個飛び交い、 ビーナスサイドと名付けられたコロニー群が存在していた ここでは、人を居住させる事を目的とした地球のコロニーと違い、金星から抽出した成分を化学反応させる為の役割を持たせたコロニーが多くを占めていて、化学生成工場コロニーの数の確保の為に削られた 大規模農園、酪農専有コロニーの生産不足分を補うために、直径7キロメートル長さ35キロメートル級の円筒型のコロニーは、本来1000万人程の人間を収容できる構造であったものの、施政施設がある一基だけを残して、居住者の数を10分の1以下に制限し、大半を農業、酪農スペースとして利用していた そして、そこに住む人のほとんどは、危険が伴う金星のテラフォーミング開発でだされる、高い報酬を目当てに貧困に喘ぐコロニーから、やってきた人々だったそして、このコロニー群から130万キロメートル離れた場所にある金星には太陽光が当たる側の高度5万キロメートル上空に、その光を少しでも遮ろうと、四方10000mの大きさで位置制御装置のエンジンが搭載されたソーラーシート(太陽電池パネルがシート状になったもの)が浮かばせられ、自転軸の上と下、地球で言うところの北と南の極地域を繋ぐように,幅100kmにわたって一直線に並んだものが、一定の区間を開けて連なり、 遠くから見ると金星の半分に光り輝く大きな橋が何本も掛けられているかのように見えた金星の周囲には他にも、極地域に5000メートル級の太陽パネルの羽をのばした静止衛星プラント(工場設備)が数十基が飛び交っていたこの衛星には、金星の大気を抽出し化学処理して貯蓄できる機能が備え付けられていてそのために気体を採取するパイプが、大気圏内にまで伸びているのだが、惑星内部には風速300メートル以上の対流の風が吹き荒れているため、その風にパイプが持っていかれ、衛星ごとと流されて制御できなくなる危険性があった その為に台風の目と同じように、対流の渦の中心となって比較的風が安定している 極地域にかぎって飛んでいるこれら衛星プラントの下部から伸びるパイプは、特殊合金で作られたホースをより集めた、直径10メートル程の太さの物で、その先端にはフローティング・プラント と言われる、特殊合金で作られた50メートル程の球体が繋がっていて、気体はその球体から吸入され衛星に送られている(本来フローティング・シティーと言われていますが 人が住む条件ではなく 工場施設としての利用なのでプラントにしました) このフローティングは金属で出来た球体にも関わらずこの惑星が持っている高い気圧の圧力から生じる浮力を、利用していて、衛星から引っ張っぱり上げる力を必要とせずに、大気圏内で浮かんでいる そして、球体の側面には掃除機の柄の穴ように、余計な吸引力を逃す為の噴出口があり、その出力を調整することで、浮遊高度も若干、調節できるようになっている また内部には、大気の気体成分を識別してふるい分ける機能も備え付けられていて、衛星プラントの化学処理の性能にあわせた種類の気体がそこへ送られていた 他にもフローティング・プラントの種類には、フローティングそのものが、金星の持つ熱エネルギーと90気圧の圧力を活用して化学生成を施す性能の物もあり、本来、衛星とはパイプが一本で繋がっているはずのところ、これには、化学反応に必要な水素を衛星からフローティングへ向けて 送るパイプがもう一本ついていて、衛星に取り付けられた粉砕器で粉砕された氷の粒が、一本のパイプからフローティングへ送られ、フローティングの内部で水素と二酸化炭素等と結合する化学反応が施された後に、もう一本のパイプで衛星に送られ、 そして他の衛星同様、凝固化されてタンクに貯蔵されていた これら、衛星プラントはタンクの中が一杯になりそうになると信号が出るようになっていて、信号をキャッチした運搬船がタンクごと交換していた タンクの交換作業や部品交換等のメンテナンス作業には、モビルスーツが用いられていたが、この作業には危険がつきまとい作業途中で、金星の重力にとらわれ落下し、何人もの人が還らない人となっている そうした危険を払いながら運ばれる化合物は、成分によって扱いの違うコロニーに、それぞれ運ばれ、そのまま使われるものもあれば、再び工場施設コロニーに運ばれ化学処理されるものなど、様々だった運ばれてくる物質の中には、メタンガスや濃硫酸等があったが、群を抜いて多いのが凝固化した二酸化炭素で、それを遺伝子操作した植物の組織の光合成で炭素化する専用のコロニープラント(工場施設)が存在した このコロニーの形は人が居住する円筒型のタイプに似ていたが、光合成を促す為に窓の大きさは居住コロニーの倍以上あり本体がガラスで作られていると言っても過言ではなかった また光合成の効率を上げる為にミラーの反射板の数も多く、それらで反射された太陽光は24時間降り注がれ、ガラスで透ける巨体は常に薄緑色に光り輝いて、「女神の翡翠」と謳われるようになっていた その特殊な強化ガラスで覆われたボディーの内部の側面には、透明樹脂で出来た直径30センチ程のパイプが、まんべんなく敷き詰められ、 パイプの中には遺伝子操作されたマメ科の葉緑体の一部組織が溶液に溶かされて入っていて緑色になっている それらの溶液は休む事無く循環していて、光合成が進むと液体の中に細かい泡と白や薄茶色の小さな粒が現れ浮遊するようになってくる パイプの継ぎ目には葉緑体の細胞組織と二酸化炭素を注入する機器と一緒に特殊な分離器も組み込まれていて、溶液が分離器に掛けられると、気体は酸素だけが取り出されてボンベに貯蔵され、溶液の中で漂っていた粒は粉末となって一カ所に吐き出されていたその粉末は、おもに、圧縮加工されて人工ダイヤに生まれ変わり、金星開発の重要な資金源として売買されている 宇宙時代には既にガンダリウム合金のような、硬質な素材がいくつも存在したが、高価であった為に庶民の手には入りずらく、人工ダイヤは工業用として重宝されるのはもちろん、地球から採掘される物より安価であった事と、金星が地球時代から女神にあてがわれて、崇拝されていた事もあってビーナスダイヤというブランドとして庶民に親しまれていたしかし、それだけの技術があるにもかかわらず、人の生活に欠かせない水分は、金星の大気中からもほとんど採取されず希少であり、その上、化学処理をする際にも大量に使われ需要が常に高く、その負担は居住者に跳ね返っていた 続きを読む戻る 5月2日に書き直しています