「江戸時代 武士の生活」 【進士慶幹・編。雄山閣】
1962年初版。1976年増補九版 武士の生活講座。 もとは、日本生活風俗史の「江戸風俗」の中に収められるはずだったのが、シリーズが中絶し、宙ぶらりんになっていたものを、原稿が集まっている文だけ単行本にした、ということが「はしがき」にある。 武士の一日の朝から晩までということではなく、さまざまな角度から、武家を中心に江戸時代像を明らかにしようという本。 それぞれ研究者が書いているのだろうが、研究者というのはいろいろなことに興味を持つものらしく、内容は多岐にわたる。 項目は以下の通り。「武士の身分と職制」(新見吉治) 「芸者」という項目があり、「会津には武術芸者・御つぐ芸者という称呼がある」(p37)そうだ。芸者と武家は隔絶した存在だったからこそ、武士にも用いたのだそうだ。 今まで「武芸者」は「武芸+者」かと思っていたが、「武+芸者」だったらしい。「大奥の生活」(進士慶幹) なんと、大奥に関する資料というのは非常に少なく、しかも、それぞれ内容に違いがあって、実像はよくわからないということが正直に書いてある。「大名の経済生活」(藤野保)「武士の公私の生活」(阿部善雄)「武家の奉公人」(北島正元)「暗殺」(芳賀登) こういう項目をまじめに取り上げているのが偉い。 章立てで「暗殺の種類」「暗殺の歴史」「暗殺と攘夷暴行」「暗殺の内容」「暗殺の手段と方法」「暗殺者を生む精神的風土」となっている。 「暗殺者を生むようなところからは、学者は生じにくい」(p157)のだそうだ。「元服」(日野西資考)「輿入れ」(進士慶幹)「藩校」(笠井助治)「隠居」(武田旦)「石高と扶持」(新見吉治)「代官」(村上直)「侍屋敷」(筑紫申真)「忍者と隠密」(村上直) しのびの道具などの写真が多い。中に「虚無僧姿の隠密」という人物写真があるのだが、出典は何なのだろう。「殉死」(古川哲史)「敵討」(中田四郎)「浪人」(谷口澄夫)付録として「江戸時代の村と農民」(北島正元・村上直) 大蔵永常『広益国産考』からの引用文に「屋敷廻りにらい地あらば」(p309)とあり、「らい地」とは何だろうと思ったら、余っている土地、という意味だった。 「関東取締出役」が目についたところで二回出てきたが、いずれも「出役」に「でやく」とルビを施していた。これは「しゅつやく」のはず。楽天ブログランキング←クリックしてください