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碁法の谷の庵にて

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2010年07月09日
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テーマ:ニュース(100183)
 法改正が先か、違憲判決が先か、という感じでしたが、ついに来るべき時が来た、という感じでしょうか。
 
 被相続分区別の事案について、最高裁が大法廷に回付した、とのこと。
 実は、最高裁判所がこれまで使ってきた判例を変更するには裁判官15人で構成される大法廷を開くことが必要なのですが、これまで小法廷で開きまくって合憲判断を維持しておきながらいきなり大法廷に回した、と言うのは、事案にもよりますしもしかしたら違う争点があってそっちの判断で大法廷に回したという可能性は捨てきれませんが、まずは違憲判断の可能性が高い、とは言えるでしょうね。
 

 実は以前、こんな記事を書きました。
 つまりは、国籍法違憲判決が出た段階で、最高裁の多数意見が「子どもに関係ない問題である」と言う点を強く強調していたことから、この問題に対する最高裁の態度にも影響が及ぶかもしれないと指摘したのですが、違憲判決が出たらさもしくも少し自慢しようかな、なんてことも思っています。

 まあ、違憲説、合憲説ともどちらの結論もありえない結論だとは思わないのですが、一つ指摘しておきたいことは、相続分区別の場面は意外なほどに少ない、という点でしょうか。
 相続分が区別されるのは、嫡出子と非嫡出子の間だけです。
 非嫡出子と配偶者しかいない(つまり配偶者に子どもがいない)場合には、区別が全く働きません。非嫡出子が半分もらっていくことができます。 
 また、法律上有効な遺言が残されていればこうした規定には全く意味がありません。
 もちろん、法律の規定ではこうだけれども、非嫡出子にも嫡出子と同じように訳ましょうという合意をすることも当事者の自由となっています。 

 ネットで違憲にしたら家族制度が壊れる、と騒いでいる人たちは、当事者が勝手に変えることすら許容されている限定的な区別をなくした途端に家族制度がおかしくなる、という理屈を主張していることになりますが、本当かな?と言う疑問はぬぐえません。
 もちろん、この点は違憲説にとってもごく補充的な規定であるから問題ない、と言う理屈に使われるので(合憲とした最高裁判例も現実にその点を指摘している)ウイークポイントだったりするのですが。
 

 もう一つの問題として、遺産を分割する場合には、ある程度まで合目的的な分割が許容されている、と言う点に注意する必要はあるでしょうね。
 法定相続分の規定を粉砕するようなものはともかく、ちょっとやそっとずれているという程度では違法の問題にならないのです。例えば各人3分の1ずつ、と法律で規定されている場合に、30%:40%:30%と家庭裁判所が決めることも、許される場合がある・・・というか、おそらくリアルでその程度の差がついていることは珍しくもなんともないと予想しています。
 理論的に考えれば、全ての財産をきちんと評価して金銭に代え、あるいは現金を払わせるなどして配分すべきなのかもしれませんが、そんな事をしたら換金や評価に手間や金等がかかってしまい、紛争が長引くばかりになったり、トラブルの元になってしまいます。
 これまで誰が使ってきたか、誰が必要としているかなどと言う点を配慮した上で、ある程度の差をつけることは認められているのです。
 そして、そこには関係者の生活維持や、被相続人に貢献してきたのは誰かと言う視点が組み込まれることも十分にありえます。
 具体的な妥当性のキープは、ある程度までであればそこで代替することができる、と言う点はどちらの立場をとるにせよ注意しておくべきでしょう。
 
 
 最後に、平成7年の最高裁判例&意見が掲げた合憲と違憲の個別の根拠をそれぞれ指摘しておきましょう。もちろん、正確にどのような流れで判断しているかは、原文にあたるようにしてください。
 なお、平成7年判例は合憲説10、違憲説5ですが、合憲説でも法改正などによる改正について言及するなどこの規定に否定的なニュアンスを持つものが多く、「それでも違憲とまではいえない」という考え方であることは留意しておくべきでしょう。

合憲説

一、法定相続分の定めは指定がない場合に補充的に機能するものである
二、民法は法律婚主義を採用している以上、区別が生じるのはやむを得ない(以上法廷意見)
三、相続分について差を設けても婚外子が生まれることが抑止できないというが、これはそう言った目的効果の問題ではなく、法律婚主義のもつ論理的帰結である。(可部裁判官補足意見、事例にも言及あり)

違憲説

一、出生について非嫡出子は何の責任もなく、意思や努力で変えることができない。
二、非嫡出子を嫡出子に劣るものと言う方の基本的観念を表示してしまっており、差別を助長している。(個人的に、ネットの意見を見てるとけっこう共感できるものがある)
三、諸外国の立法の体制や国際人権規約、児童の権利に関する条約の規定も児童のようどうな扱いを要請している。
四、もし本当に法律婚を守ることを直接の目的としてこのような規定が設けられたのであれば、当事者の意思で変えられるような規定にするはずもない。(尾崎裁判官追加反対意見)





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最終更新日  2010年07月09日 22時42分32秒
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