カテゴリ:事件・裁判から法制度を考える
大阪地検で,担当検察官がコロナウイルスに感染したために、裁判員裁判の日程が延期されたというニュースが入りました。
これで被告人はさらに身柄拘束を長期化させられることになります。 被告人側の準備のためやむを得ず伸ばして…という件ならともかく,ようやく裁判が進むとなった時に膝カックンをかけられた被告人の落胆は察するに余りあります。 この事件の被告人が事実関係を認めるのか否認するのかは分かりませんが,どちらにしても好ましくない事態であることは明らかです。 今の時代,コロナウイルスに誰がかかるか分からない以上,感染の一事をもって担当の検察官個人を責めるつもりは私にはありません。 私だっていつコロナウイルスに罹患するか,分かったものではないからです。 この件は,検察庁の不始末と考えます。 そもそも裁判員裁判案件なら検察官が2人で担当するのが当地では通例なのですが,残されたもう一人ではできなかったのか。 検察官という組織体で,コロナに限らず検察官個人が事故に見舞われた時に備え,代りが務まる検察官が準備できなかったのか。 コロナウイルス感染判明は4日前だったそうですが,4日の間に二人目を対応させることもできなかったのか。 もちろん,代打役も準備してたのにそちらの検察官までコロナに罹患して…ということになってくれば,組織的対応にも限度があるでしょう。 しかし,誰一人代打ができなかったのか,と思うと,大阪地検のコロナ関連の危機管理は甘すぎたのではないか,と思わずにはいられません。 ちなみに,私は裁判員裁判で裁判官が当日にインフルエンザにかかってしまい,裁判が延期するというトラブルに見舞われたことがありました。 ただ,別の部から代打の裁判官が出て来たので、延期は半日で終わりました。 幸い,特段事実に争いのない件だったので,多少日程を詰めざるを得ない所はありましたが,何とか影響が少なく終わったと思います。 裁判所は、裁判官のコロナやインフル感染にはある程度は対応できるようにしているということです。 とまあ上記のように、裁判所も対処できてるのに対処できない検察庁は…と偉そうに検察庁を指弾するのは簡単ですが、実のところ法曹三者で一番コロナ対策ができていないのは検察官(検察庁)ではなく,弁護人(弁護士・弁護士会)であろうと思います。 裁判員裁判では国選弁護人を複数つけることが認められることが多いですが,準備の便宜を考えると,複数弁護士がいる事務所なら同じ事務所の弁護士に頼むケースが多いのではないでしょうか。(私もそうする場合が多いです) そのとき,担当弁護人がコロナウイルスなりインフルエンザなり,交通事故に遭った,なんてことでも倒れることも考えられます。 コロナウイルスが事務所内で蔓延してしまって、二人ともアウト…という可能性だって否定できるわけではありません。 そのときに,残されたもう一人の弁護人だけ、時には実働可能な弁護人がゼロ人になってしまって、代打となる弁護人などを派遣する体制などはできているでしょうか。 一応コロナなどで実働不可能となれば国選弁護人の交代が認められる可能性はありますが,交代すれば結局は準備期間をそれなりに与えざるを得ず,結局今回の検察官と同じ結果が待っていることになります。 予備の弁護人を準備して、記録を読み込むくらいの準備をさせておけばよいと思うでしょうか? 残念ながら、現在は正式に弁護人として選任されなければ,報酬も出ません。 検察官や裁判官のように公務員として事件の数に関係なく報酬が保障されている立場とは訳が違います。 従って,「予備役の弁護士」は結果的に本来の弁護人が倒れる事態にならなければ,何の報酬もないまま予備として待つために準備をし、当日判明するであろうコロナ感染から1週間、場合によっては1か月以上も集中的な裁判に対応できるよう日程を空けておけ(当然その間仕事の予定はまるで入れられない)ということになります。 いくらなんでもそこまで無報酬で対応できる弁護士はいないでしょう。私もお断りです。 結局、弁護人側のコロナ対策というものはほぼ弁護士個々人の感染しない努力に丸投げされているというのが実情であろうと思います。 そうすると,今回の件で弁護士・弁護士会側は偉そうに今回の件で「身柄拘束を伸ばして準備体制に問題がある!!」などと検察庁に文句は言えるだろうか、というと「言えば10倍返しされてしまいそう」だと感じてしまうのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年10月21日 18時32分27秒
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