はっぴーふぇいす

　先日、真下の住人さんから苦情を言われました。

「毎日毎晩、物音がうるさ過ぎる！
　　いい加減にしてくれませんか！？」

　

　簡単にいえばこういう内容の苦情です。
騒音の苦情は初めてではありません。
これで二回目です。

　前回は夫が応対したので、私は直接は苦情を聞いていません。
でも今回は夫が不在時のことで、そして相手が私だったからか思いっきりいわれてしまいました。


　かなくんは最近家の中を走り回ります。
時々あちこちにぶつかって転がりながらも、最近お気に入りのボールを投げたりしながら
狭い部屋の中を所狭しと駆け回ります。
　その合間にお気に入りのおもちゃで遊び、そのおもちゃに飽きると何の前触れもなくいきなり
おもちゃを床に叩きつけるのです。
壊れたおもちゃや壊れかかったおもちゃで部屋の中は散乱し、その中を駆けずり回るのです。


　もちろん、叱ります。
ドタドタと走り回ることも、おもちゃを投げつけることも、してはいけない事はその都度言い聞かせます。
ただ言い聞かせたからといって次からは気をつけるのかといえば、そんなことはあり得ません。

　一生懸命、一生懸命、私なりにかなくんに届くように言い聞かせます。
時には手をペチッと叩くこともあります。
少しでもわかってくれるように、この小さな積み重ねがいつか実を結ぶことを祈りつつ、心を込めて
言い聞かせます。時には優しく、時には厳しく、言い聞かせます。

　



　でも、理解してはくれません。
理解できないのです。


　

　だけど、そのことは真下の住人さんは知らないのです。
かなくんのことは何も知らないのです。
だから「躾のなっていない子供だ。躾をしない親だ」と思ってみえるのです。
夫は「知らせた方がいいかも」というけれど、知らせたからってそれが何になるのでしょう。

　うちの子は重度の知的障碍があって、何も分からないのです。
　だから物音や奇声が苦になっても、多少は大目に見てもらえませんか。

　そんなことを話したところで、物音は物音で、騒音は騒音でしかないのです。
真下の住人さんだって、生活をしているのです。
夜はゆっくりのんびりしたいでしょう。１日の疲れを癒したいでしょう。
それなのに真上からドンドン、ガンガン、ガタガタ、ドタドタ・・。
でも障碍児だから許してね、といって、ハイ分かりました、という人がどれだけいるでしょう。

　真下には２歳の女の子と生まれたばかりの男の子がいます。
その子たちが寝つけない、とも言われました。
仰るとおりです。
うちが悪いのです。


　



　かいくんに「もっと静かにするように」と言い聞かせました。
でも子供のすることです。
かいくんですら、私の言うことを理解してくれても、つい、物音をたててしまったり、廊下を走って
しまったりするのです。
かなくんなんて、私の懇願も哀願もどこ吹く風です。
なんといっても「平成の破壊王」と異名をとるオトコです。
いつものとおり、です。全く自由気ままにドンドン、ガンガン、ドタドタ、ガタガタ・・・。

　かなくんは理解できないから仕方ないのです。
だからせめてかいくんくらいは理解して気をつけてほしい。

　ついかいくんばかりを叱り付けてしまうようになりました。
ほんの些細な物音でも、かいくんを頭ごなしに叱り付けて睨み付けてしまいます。
私は夜内職もあって、もうイライラは最高潮に達して「家族の団欒」どころかどんな物音にも
些細なことにもとてもとても敏感になっていて、その矛先はかいくんに向けられて、そして
ふと気がつくとかいくんは家の中をまるで泥棒のように抜き足差し足で歩くようになっていました。
そんな歩き方に今日気がつきました。
ビックリしました。
その歩き方にも、いつからそうするようになったのか全く気がつかなかった自分にも。


　のんびりできる家の中を居候のようにビクビクしながら歩くかいくん。
かいくんの一生懸命に気づかずに怒鳴りつけてばかりいた私。


　なんでだろう。

　私なりに一生懸命いろいろなことに頑張ってやっているつもりなのに、「頑張れる」と思えるように
なってきた矢先にいつもこんな感じで足を掬われるような気がします。
被害妄想なんだろうけれど、なんでって思ってしまいます。
かいくんのことでいろいろと考える日々があって、それはもう今でも思い出すたびに鮮明に
言われたこととかあまりの悔しさに憤死しそうな感情とかがあって、そういうのを堪えて押さえて
なんとか日常を静かに過ごしていきたいと思っているのに、ここでまた苦情を聞かされて・・・。

　それ以外にかなくんがらみでイベントが目白押しで、今週はそれに加えてかいくんの就学前検診も
あって、そうでなくてもなんとか必死に毎日をこなしているのに。


　もう果てしなく湧き上がってくるのはただひとつ。


　　なんで、私ばっかりこんなことになっちゃうのか？


　世界で自分だけが可哀想、という考え方は日頃とても鼻につくイヤな考え方だと思っているけれど
正直今はこの気持ちでいっぱいです。

　加えて

　　どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
　　どこでボタンを掛け違えちゃったんだろう。

　今まで何度も何度も自問自答して反芻してきた愚問が、また沸きあがってくるのです。


　グチグチした日記や、体調不良だなんていうしめっぽい日記なんて書きたくなくて、バカバカしい
ほど楽しくて面白い日記なんてのを書きたいなぁ、と願っていて、そんな読んでくださる皆さんが
笑ってくださるような日記を書けるように、体力も気力も整えられるように充電期間が欲しいな
なんて思っていたのに・・・。

　家の中でかいくんばかり怒鳴りつけていて、こんなことをしていたらあのＡくんママの言うとおり
かいくんがイヤな子供になっていっちゃわないだろうか、なんてことまで考え出したら寝られなく
なりました。
要するにそんなちっぽけな母親なのです。
かいくんのことを守るどころか、どんどん押さえつけているのは私です。

　母親失格。

　真下の住人さんもＡくんママも、ダレもいないところに子供たちと一緒に逃避行したい。

　　　　　　　　　　　　　って、逃げることばっかり考えないでもっともっと強くなりたい。


　なんか泣けてきたなぁ。
思い切ってたくさん泣こう。
こんな時間だけど、たくさんたくさん泣こう。
涙が出てこなくなるのが何時になるか分からないけど、涙が止まったらチョコレートなんて
食べてみたりしよう。
　チョコで癒されたりしたら、少し眠って、また明日頑張ってみよう。

　そんなことなんかでこの事態の何の解決にもならないけれど。

　それでも、かいくんにちゃんと謝れますように。