二十歳の原点。
婦人科の定期健診に行ったついでに、足をのばし、何年ぶりかに我が第二の故郷ガクダイへ。ランチをしようと決め、ダンナと改札で待ち合わせ。まるで結婚前の頃に戻ったみたいに新鮮?かと思ったが、やっぱ歳とりすぎ、ふたりとも。そのぶんこの町は少し若返り、駅周りだけを見ても来る度にどんどん小奇麗に整理され、見慣れた景色の一部が消されてく。昔ながらの親しみに満ちた庶民的な商店街と、こだわりの素材や趣味に彩られた個人店が違和感なくブレンドされ、いい塩梅にひとつにおさまってる、その気張りすぎない空気が好きで。だから上京歴の浅い田舎者の私が、独り暮らしをするなら絶対にココ!と決めていた。そうして運よくガクダイに辿り着いたのが、二十歳の頃。この町で世田谷区その後目黒区とわずかな距離で住み替え、大学を卒業し、就職をし、転職をし、いくつかの恋をしてやぶれ・・・を繰りかえし結婚する直前までこの町に居て。気づけば私の生きてきた道のりの大半を、この町で刻んでいたようなものだ。今でも駅に降り立つと、あの時に私が感じていた思いや場面の細々とした記憶が、一気によみがえってくる。それはどんなに町が様変わりしようが、変わらない。ランチに入った店は、暮らしていた時にオープンした。こんなに長く続くなんて思いもしなかったけど、結構がんばってるんだな。住まなくなった今になり、初めて店に入るなんて、それもまたあの頃は思いもしなかったけれど・・・料理を待つ間、有線から聞こえる懐かしいJ-POPに、話が盛り上がり。と、言うのも、かかる曲の全部狙ったかのように、私が音楽雑誌を作ってた当時に仕事で聞いてきたり取材したりした曲ばかりだったのだ。イントロがかかるとすぐに、アーティストや曲名を当ててしまうからダンナが面白がって。勝手な思い込みだけど、この日この店に急に入りたくなったのも、偶然じゃなかった?なんて、夢にがむしゃらだったあの頃の自分と、対面したようなこそばゆさを感じつつ激安ランチを頬張る。味はまー、値段相応。でもガクダイでしかも駅近でこの安さで今も続いてたのはすごい。次に訪れる頃も、ぜひこのまま、この場所で。お腹も満たされたので、最後に住んだマンションまで歩く。この辺りも多少は新しくなった所もあるが、良くも悪くも変わってない。それがちょっと嬉しくも。私の家だった部屋にも、あれから何人目の主を迎えたのだろう。街路樹に懐かしい青い実が転がり、それを見てまたダンナと思い出話が広がる。あちこち歩き回ったので、再び休憩をとるが。ガクダイに何故か店がある、郷里の唐揚げをテイクアウトでひと袋ゲットし公園で頬張ってご機嫌になる。これまたこの公園も、住民になった頃から在るんだがベンチに座るのなんて、これが初めて。あんなに知り尽くした町でも、未体験がいっぱいだ。次の散歩はいつになるやら。近いようで遠い、私の原点。でも思い切って行って良かった。少しの間だけ、今の自分の暮らしや抱えてる問題を忘れられた。ダンナも楽しそうだった。住んではなかったのに、私と同じで癒される場所、らしい。よし! 次は定休日じゃない時に、マッターホン行くぞ♪余談。二十歳になった頃と言えば、「二十歳の原点」という本を読んだのを思い出す。こんな激しい人生ではないけれど、あの頃のあの町で暮らしてた私はそれなりに苦悩や悲しみときどき喜び、生きてる実感を強くこの身で受け止めていたそんな時代だった。★ ★ ★ ★ ★今日のやや長いひとこと。「この時季になるとボスを思い出すのは、ダンナも同じらしい。あんなに魅力のある猫に、再び会えないもどかしさを抱えたまま早二年。」