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「桜花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞ立ちける」 紀貫之 古今和歌集 風で桜の花が散ってしまった名残を惜しみつつ空を見上げると、 水のないはずの空に波が立っているように感じることだなぁ 映画の1シーンのようですね。 「桜花」から始まる和歌は、桜の花のアップから始まります。 「桜」だけでも桜の花をイメージしますが、「桜花」と表すことでぐぐぐっと近寄って見ているような印象もあります。 物理的な距離という意味ではなく、気持ちを寄せているというか。 風で残り少なくなりつつある桜の花びらが散っていく・・・その風の動きに視線も動かされます。 「散りぬる」から「風」で動きを示す言葉が重なっていますが、 そこから「なごり」とすることで力が弱まり、余韻を追うようなイメージです。 これが「水」と重なって、 透明感を出していますね。 そして「空」で、広い大きな青空をバックに広がります。 先ほどの桜花の花びらの舞うのと色を引き立て合います。 ますます花びらの小ささ、散って遠くにいく感じのはなかさも印象的です。 風の余韻と舞う花びらとで波が見えるような気がする…。 最後は、カメラで言うと風景をぐっと引いて遠くから見ている感じです。 この感じもまた、名残りを惜しむ心情としっくりきていますね。 もしかして、「桜花」を比喩として誰かへの消せない恋心も含まれているのかな。 あなたを思うと平穏ではいられず、私の心は波打つのです・・・のような? と想像が広がる点も和歌の魅力の一つですね。 この和歌、今公開されている映画「ちはやふる」の原作でも紹介されていました。 1コマで原歌だけですけど。 和歌が好きなかなちゃんというキャラクターが、好きな和歌として紹介しているのですが、 私も好きです。 季節もぴったりなので、今日はこれを記事にしました。 1000年も前の人が書き留めた和歌を読み、共感し、その表現のすばらしさに感嘆します。 日本語の誇らしいこの世界を、多くの生徒達学生達にも楽しんでもらいたいものです。 一応、文法的にも抑えておきますね。 「波ぞ立ちける」のところに係り結びの法則が使われていますね。 普通の形だと「波立ちけり」。 そこに係助詞「ぞ」があることで文末の過去の助動詞「けり」の部分が連体形「ける」に変化しています。 係り結びの法則というとややこしく聞こえますが、現代でいう「絵文字のキラキラ」とかLINEのスタンプだと思ってください。 当時は筆の黒一色でその感動を強調する必要がありました。 今の人なら、絵文字を押したいとき、スタンプを押したいときに出てきますよ。 「ここ強調!」っていう約束の記号みたいなものです。 「ぞ・なむ・や・か・こそ」は、キラキラのシール的存在。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年04月12日 22時12分31秒
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