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カテゴリ:映画・アニメ・音楽
NHKで放送された「この世界の片隅に」をじっくりと鑑賞。
つくづくフォークルの「悲しくてやりきれない」ってのは、 不思議な歌だなあ、と思いました。 … よく知られているように、この曲は、 期せずして発禁処分になった「イムジン河」の代用品として、 パシフィック音楽出版に強制され、 軟禁状態におかれた加藤和彦が無理やり作らされたものです。 「イムジン河」の音符を逆にたどっていたら、 ひょろっと思いついたメロディだともいわれています。 しかも、そこに、 これまたフォークルとは、縁もゆかりもない、 ジャンルも世代も違う、サトウハチローという御大が、 なんの打ち合わせもないところで歌詞をつけてしまった。 ◇ この曲は、 だれの表現の意思ともいえぬところに出来てしまった、 いわば偶然の産物であり、ある意味では、さかさまの歌です。 パシフィック出版でもなければ、 加藤和彦でもなければ、 サトウハチローでもなければ、 イムジン河の作者でもない。 日本人でもなければ、朝鮮人でもない。 だれの意思でもない、 何らの「表現の意思」とも無縁なところから、 ぽわん、と生まれてきてしまった歌。 そんな歌が、これほどの普遍性をもってしまっている。 山田太一や、 周防正之や、 井筒和幸や、 片渕須直といった人たちに、 繰り返し、繰り返し使用され、 いまや時代と空間を超えて、 世界中で聴かれています。 ◇ それをコトリンゴが、 ぽわん、と歌っている。 映画のなかでは、 ボーっと生きてきた一人の無力な女性が、 気づいたら、知らない土地に嫁いでいて、 まったく無力なままに、 選べなかった家族や、 選べなかった時代や、 選べなかった国家の運命に翻弄されていきます。 そんな悲しくてやりきれない人生に、 この誰の意思でもなく生まれた、さかさまの歌が、 ぽわんと乗っかって、ぴったり寄り添っていく。 そして、 特定の誰かのものではない、 普遍的な悲しみを歌っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.07.26 01:56:09
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