かえでが4年生になった時、県の自閉症協会というのに入会した。
自閉症についてのいろんな情報が知りたいということが目的だったけど、
一番興味があったのが、毎年夏休みに行われている「キャンプ」だった。
キャンプと言っても、アウトドアのテントを張って寝泊りするキャンプではなくて、
公共の施設を使って、2泊3日の宿泊研修をするもの。
一応、入会していないと、キャンプには参加できないので、
同じ養護学校へ行っている同級生のTクンのお母さんと相談して、一緒に入会した。
このキャンプもけっこうな人気があるそうで、
毎年定員オーバーしていて、なかなか参加できないという人もいる。
せっかくキャンプのために入会したのに、参加できなかったら意味がない。
募集と同時に、Tクンと一緒に申し込んだ。
なぜ、こんなにこのキャンプに参加したかったのかと言うと・・・
別に大した理由はないけど、かえでの排便ができるようになったことと、
比較的落ち着いていたことで、今までに経験したことのないものに挑戦したかったという感じ。
2泊3日の間、親子は離れ離れになり、
子供は学生ボランティアさんに預けて、親は研修会に参加する。
学生ボラさんは、県内の大学・短大・専門学校生がほとんどで、マンツーマンで付いてくれる。
事前打ち合わせのために、かえでの担当になったボラさん(すごく可愛いおねえさん)が、
キャンプの2週間くらい前に、かえでに会いに来てくれた。
大学の教育学部(障害児教育)で、勉強しているというMさん。
卒業したら、養護学校の先生になりたい、と言っていた。
嬉しいですね!こういう人がたくさんいてくれるって
ほんとに可愛くて、しっかりしていて、でもちょっと控えめで、
静かにじっくり見守ることが上手そうな人だった。
食事の様子を見てもらうために、一緒にレストランに行って食事をしたり、
夏休みの学童保育に一緒に行って、過ごし方を見てもらったり、公園で一緒に遊んでもらったり、
1日掛けて、宇宙人かえでを少しでも理解してもらうようにした。
いきなり宇宙人と2泊3日も付き合わせるのでは、可哀想ですものね。
このMさんなら安心して任せられそう。
そして、キャンプ当日。
車で1時間ほどの湖畔の会場に着くと、体育館に集合した。
兄弟姉妹の参加もOKなので、兄弟グループには、別の楽しく過ごすプログラムが用意されていた。
我が家も、なかなか泊まりで旅行にも行けないので、このキャンプに姉妹も一緒に連れて行った。
何組くらいの親子が集まったんだろう?
さすが自閉症児の集まりですわ
あちこちから泣き叫ぶ声や、すでに脱走した子を追いかけるボラさん・・・
先行き不安になった。
かえでは、家を出る時にちょっとお腹を痛がっていたけど、
時間がなかったので、そのまま出発
着くとすぐに、トイレに行きたがった
どこにトイレがあるのかもわからない。
大きな荷物を抱えて、あちこち聞きながら、やっとトイレを探し当てた
しかし・・・
私の頭の後ろで、パイプオルガンが鳴り響いた
チャララ~ チャララララ~ラ~・・・・・
どこも和式だ
かえでは、洋式でないと
ウンチが出来ないのよーーーっ\(◎o◎)/!
待てよ?
和式でも出来るかもしれないじゃん。
こんなピンチの時こそ、チャレンジャーになるのよ!
いやがっていたけど、和式のトイレにしゃがませてみた。
わはは・・・
やっぱりダメでした
ボランティアの可愛いMさんとも、まだ会えてなくて、泣きたい気分になってしまう。
でも、泣いている場合ではなかった。
早く洋式トイレを探さなくては!
しかし かえでは、もう便意を我慢できずに、
久々にパンツの中にもっこりしてしまったのであった
この出来事の前後、かえではずっと不機嫌極まりなかった。
びーびー泣いたり、ギャーギャー怒ったり・・・
そりゃそうだよね。
ただでさえ、どこに連れて行かれるのか見通しも立たないのに、
知らないところでウンチしたくなって、
トイレも思うような所がなくて、来て早々にお漏らしもして・・・
ごめんね、かえで~
ほんとに、かえでには可愛そうなことをしてしまった。
私も、ものすごくショックだった。
せっかくトイレで出来るようになったのに、もしかしてまた逆戻りしないだろうか。
せっかく意気込んでキャンプに来たのに、いきなりこんなことになってしまって、
かえでは、落ち着いて2泊3日過ごせるんだろうか。
可愛いMさんには、会えないし・・・どうなっちゃうんだろう
トイレといえば、「洋式」のことしか頭になかった自分に腹が立った。
この事件以来、出かけるときにはトイレがどうなっているか、
必ず事前にチェックするようになった。
今では、和式洋式問わずにできるようになったけどね^_^;
姉妹は、兄弟グループと合流し、
初対面の子ばかりでもすぐに仲良くなって、みんなで楽しそうに遊んでいる。
ちょっと頭の中の作りが違うだけで、どうしてこうも違うのだろう。
多動とファンタジーの世界に浸っている、超過敏な自閉症児Tクンも、
かえでよりもっとすごいパニックを起こし、お母さんはかなり大変そうだった
いつもなら私が助け舟を出すところなんだけど、
その日ばかりは、そうも言ってはいられなかった。
情けないやら、悲しいやら、惨めな気持ちやら、焦りやら、不安やら、とにかくいろんな思いで、
キャンプは始まったのだった。
続く・・・