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うたのおけいこ 短歌の領分

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2010.05.31
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カテゴリ:坂本龍馬
NHK大河ドラマ「龍馬伝」で、このところ立て続けに、お金にまつわる話が出てきている。

〔1〕 坂本龍馬が勝麟太郎(海舟)の命を受け、海軍創設に絡んで、越前福井藩主で幕府政事総裁職だった松平春嶽(まつだいら・しゅんがく)から「1000両」を調達したこと。

〔2〕 のちの三菱財閥創業者・岩崎弥太郎が、土佐での雌伏の青年時代、材木を1本「60文(もん)」で売りさばくなどして、商才を発揮しはじめたこと。

〔3〕 龍馬が、のちに妻になる楢崎龍(ならさき・りょう)の妹の借金の抵当(かた)の「5両」を肩代わりしたこと。
・・・などである。

僕の知る限り、ドラマツルギー上の脚色や誇張はもちろんあるが、これらはすべて基本的に史実である。
さすがのNHK、時代考証はおおむねしっかりしている。

土佐藩過激派の剣客・岡田以蔵が、龍馬の斡旋で、こともあろうに尊皇攘夷を標榜する土佐勤皇党の政敵の首魁の一人である開国派幕臣・勝海舟の用心棒(ボディガード)を一時務めたのも事実であり、事実は小説よりも奇なりというほかはあるまい。

それはともかく、江戸後期・幕末の貨幣価値は、比較的時代が近いこともあって論拠も多く、かなり明解に解説できる。

結論的に言えば、江戸後期の「1両」は、現在の貨幣価値の約10万円に相当する。
購買力平価(平たくいえば、「平均した物価」)による、大体の定説である。

むろん、学者・研究者によって多少の見解の相違はあるが、そう大きな異論はない。
強いて言えば、もう少し高いかもしれないという程度であろう。

したがって、龍馬が引き出した1000両とは、現在の約1億円に当たる。

また、お龍を救った5両は、50万円である。
たかが50万円と思うかもしれないが、「基本的人権」もない時代、人一人の命は安かった。また庶民は日銭が基本で、一両小判を目にしたことさえない者が多かった。

さらに「1両(金)」は、「4分(銀)」である。
すなわち「1分(ぶ)」とは、約2万5千円である。

大好きな藤沢周平の時代小説などを読んでいると、しばしば、ワケありのご大家(たいけ)様の用心棒代が「あごあし付き(飲食代持ち)の一日一分、二分」というような記述に出くわすが、これは2万5千円とか5万円ということである。
額についてはよく分からないが、体を張る以上、まあ妥当なところなのだろうか。

そして、「1分」が「1000文(もん)」である。
ゆえに「1文」は、約25円である。つごう、1両は4000文ということになる。

早起きは三文の得という諺があるが、これは「75円の得」ということである。・・・なるほどと思う(?)

「二八(にはち)蕎麦」というものは現代にも伝わっているが、蕎麦粉の配合比率(8割)を意味するようになったのは近年のことであり、本来の意味は2×8=16文という盛り蕎麦の値段の相場を意味する。

いかにも江戸っ子らしい駄洒落のたぐいである。
なにしろ、本来「烏賊幟(いかのぼり)」だったものを、現在全国共通語の「凧(たこ)」にしてしまうぐらいの洒落っ気である。

つまり、二八蕎麦16文は、16×25=400円である。
名の通った蕎麦屋の盛り蕎麦一枚400円というのは、まあ妥当なところであろうか(・・・今の相場からすると若干安いかも知れないが)。

そんなわけで、岩崎弥太郎が手にしたのは、材木1本につき60×25円=1500円である。
元値や諸経費がいくら掛かったかは知らないが、大雑把に見て確かに儲かるであろう。
のちに巨富を築く才覚の、栴檀は双葉より芳しの逸話であった。

ところで、今年の大河ドラマにも多少の関わりがあるが、このブログサイトの最初の方の記事で、土佐藩祖・山内一豊の妻・千代が、結婚するときに持参した「10両」で夫に立派な馬を購(あがな)わせて、主君・織田信長の馬閲の儀で大いに面目を施し、ひいて出世の糸口になったという、戦前には教科書にも載っていたという有名な「内助の功」の逸話があるが、この「10両」が、現在の貨幣価値でいったいいくらぐらいなのかを考察したことがある。

その結果、戦国時代末期の1両は現在の100万円強に当たり、10両とは現在の1000万円以上。すなわちこの馬は、言うなればメルセデス・ベンツSクラス1台であると結論付けた。
これは、今でもおおむね正しいと思っているし、当時の馬を今の自動車に擬えるのも、我ながらなかなか適切な感じもする。

徳川260年の間に、貨幣経済の着実な発達とともにゆるやかなインフレーションも進行し、物価はほぼ10倍に高騰したということである。
米相場の管理に腐心した、「米将軍」こと八代将軍・吉宗の事績はよく知られている。

ちなみに、現代の事例を挙げれば、1969年に発生し世間を震撼させた「3億円事件」は、現在でいえば「15億円事件」であるといわれている。

わずか40年で5倍の物価高騰・インフレになっている現代から見れば、まことにゆるやかな歩みであったと思われる。

それにつけても、現在の日本経済のデフレーション局面はまことに憂慮すべき状態であり、明日から始まるという「子ども手当」の支給も、大した乗数・波及効果は期待できず、焼け石に水といった状況だ。
菅直人財務大臣は全く打つ手なしのご様子だ。
ここはやはり、日銀の金融緩和政策が待たれるところであろう。

・・・と書いたが、デフレ対策としての金融政策(金融緩和、インフレ・ターゲットの導入)などには激しい賛否の対立があるようだ。諏訪哲人さんからのコメントでご教示いただいた。

詳しくはこちらなどを参照。なるほど、これはしろうとの手に負える問題じゃないかも~。





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最終更新日  2010.06.11 16:15:44
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Re:「龍馬伝」の友――江戸時代の貨幣価値(05/31)   Ryu-chan6708 さん
司馬遼太郎の未公開講演テキストを読んでいたら、龍馬と岩崎弥太郎の関係が書いてあった。龍馬は「海援隊」を作るが、これは今でいう「株式会社」だから、いろいろな人から出資してもらう。
 土佐藩もカネをだすというが、支配を受けないと龍馬はいう。
 そこで仕方なく土佐藩は、会計係を一人だけ派遣する。
 これが岩崎弥太郎。だから、土佐藩士であって、海援隊士ではない。

「いろは丸事件」というのがあって、この海難事件で、龍馬は紀州藩から多額の賠償金を得る。
  金が出た頃は、龍馬は暗殺されている。
  カネは岩崎に行く。別に汚職したわけではない。
  明治になって、岩崎は、土佐藩の借金を肩代わりする代わりに、土佐藩の大阪の蔵屋敷、汽船、帆船と紀州藩の賠償金残を手に入れる。
 そのカネは3万両とも言われる。
 現在の30億円くらいになると考えられる。
 これが偉大なる三菱のスタートの瞬間だという。

 龍馬と弥太郎は性格が合わず、縁が薄かったようだが、司馬氏は、岩崎は龍馬の思想を学んで、三菱商事を興し、長崎に造船所を置いたという。
 龍馬は岩崎の師匠だったという。
(2010.05.31 19:31:59)

今後もよろしくご教示ください(^^)    くまんパパ さん
Ryu-chan6708さん、貴重なすばらしい情報、まことにありがとうございます。感服いたしました♪

龍馬は非常に弾力的で天衣無縫の融通無碍な性格、弥太郎は豪気果断の創業者タイプで、似ているような、微妙に違うような性格だったようですね。

私はいろんなジャンルの物事に好奇心がありますが、「広く浅く」の方でして、深い知識はありませんし、思わぬ誤りもあろうかと思います。
今後ともどうかご遠慮なくご教示・ご指導くださいませ~(^^)

・・・なお、3万両が30億円相当というのは、定説(および私の記事)とピッタリ符合していますね。
ある意味、ホッとしました~^^;
(2010.06.01 16:55:56)

Re:「龍馬伝」の友――江戸時代の貨幣価値(05/31)   のの雪 さん
弥太郎ってば~乙女ねえやんに
材木売れたこと威張ってないで
はやく借金かえさないと~~!!って
思わず突っ込んでいたのの雪ですぅ~~♪
(2010.06.01 18:17:35)

弥太郎、笑えますね~(^^)   くまんパパ さん
のの雪さん、毎週のレビューご苦労さま~♪
毎回楽しく読ませてもらってます~(^^)

ますます絶好調の「龍馬伝」ですが、見ていてつらい、悲しい場面も増えてきましたね。

・・・それに比べて、弥太郎のコミカルな場面は、手放しで笑えますね~(^^) (2010.06.03 18:23:26)

「デフレ」について   諏訪哲人 さん
全体の趣旨にはそぐわないのですが・・・
「デフレ」論は愚論です。
理由はブログに多々論じてあります。
http://blog.livedoor.jp/koniyasu/archives/1744278.html (2010.06.07 23:18:45)

金融政策での賛否両論を改めて認識   くまんパパ さん
諏訪哲人さん、コメントありがとうございました。

頂いたコメントをきっかけに、ネット上を検索してみましたところ、日銀の金融緩和(場合によってはインフレ・ターゲットの導入)によるデフレ脱出論には、激しい賛否両論の対立があることが改めて分かりました。

特に、↓こちらの詳細な論考などは非常に勉強になりました。
議論のベースになる思想そのものまで遡る問題のようですね。
http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/kobayashi/16.html

「問題は、こうした論理の飛躍が見過ごされたまま、『金融政策のみによるデフレ脱却』という議論が、非専門家の論壇で強い支持を集めていることだ。それも、保守系の論者も革新系の論者もこぞって支持している点が興味深い。」
・・・という指摘などはまことに「興味深い」です。

実際、僕の周囲でもマスメディア上でも、こうした方向の意見を支持・表明している人はきわめて多いと思います。
けっこう専門家(「○○総研チーフエコノミスト」というような方々)も、堂々とそう書いておられます。

私などは「非専門家」というより「しろうと」ですので、あまりにも手に余る問題であり、当否の結論などは到底確信をもって言えません。

が、少なくとも、非常に勉強になったのは確かです。
今後ともご指導くださいませ(^^)
(2010.06.11 16:06:49)

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