2008年 フランス・アメリカ
監督 ジュリアン・シュナーベル
キャスト マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ
ジャン・ドー。
42歳、「ELLE」の編集長で、恋人、元妻、子供三人あり。
充実した暮らしをしていたが、脳の病気のため
ある日突然体の自由を失う。
左目の瞬きだけで綴った本は出版され、
その数日後、この世を去る。
見舞いに来た友人が
「自分に残っている人間らしさにしがみつけば、生きられる」と言う。
彼は、ジャンが乗る予定だった飛行機のチケットを譲ってもらったが
その飛行機がハイジャックされてしまい、4年あまりベイルートで過酷な人質生活を送っていたのだ。
何度も絶望し、死のうともしたが、好きなワインの銘柄を思い出し、生き伸びたのだという。
自分に残った「人間らしさ」はそれしかなくて。しがみついたのだ、と。
この映画は、映像も音楽も本当にすてき。
患者の尊厳を重んじるケアスタッフ(美人さん)もすてき。
ベルクの海岸も美しいし、ジャン・ドーの文もすばらしい。
フランス語がわかれば、その良さがもっと解るのだろう。
ユーモア、自虐、ファンタジー、皮肉。
ジャン・ドーの「残った人間らしさ」は、「精神の自由」ではなかったか。
想像を絶するような孤独とコミュニケーションの不自由さのなかにあっても、
彼の心は自由で、それを表現することを諦めなかった。
口から食事をとれなくても、豪華な食事を楽しむことを想像する。
想像の世界では、どこにでも行けるし、何をすることもできる。
美しくも強靭な精神力。
しばし打ちのめされました。