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カテゴリ:書評
著 者=スティーヴン・オッペンハイマー(Stephen Oppenheimer) 訳 者=仲村明子 書 名=人類の足跡10万年全史 原 題=Out of Eden: the peopling of the world 発行所=草思社 発行年=2007.9 評 価=★★★★★ 人類の足跡10万年全史 現在の人類の遺伝子に記憶された記録として、母方のミトコンドリアDNAがその子供に遺伝情報として組み換えが起こらず世代から世代へ累々と伝達されること(イヴ遺伝子)と、父方のY染色体のDNAの一部がその子供に遺伝情報として累々と伝達されること(アダム遺伝子)、この二つを手掛かりにその突然変異を起こす確率と時間スケールの計測から、現在から過去へさかのぼることによって、現在につながる人類がどこで誕生し、どの道を通って、どのようにして地球全体に拡散したのかを気象学や化石の考古学を考慮することで科学的に明らかにした大作である。 この本の結論は、以下のとおり。現生人類(ホモ・サピエンス)は、15万年以上前、アフリカで暮らしていた。8万5千年前、人類の一団がアラビア半島南部からインドに向けて移動(現生人類の全ての非アフリカ人はこの一団の子孫にあたる)。7万5千年前、インドから東南アジアへ進出。6万5千年前、人類はチモールからオーストラリアへ進出。5万2千年前から4万5千年前、インドからヨーロッパに進出。4万年前、パキスタンから北へインダス川をさかのぼり中央アジアへ進出。また、東アジア沿岸の人類がシルクロードに沿って西へ進出。4万年前から2万5千年前、中央アジア人が西のヨーロッパと東のべリンギアへ進出。2万5千年前から2万2千年前、シベリアとアラスカをつなぐベーリング海の陸橋を渡る。1万9千年前から1万5千年前、北アメリカへ進出。1万2千5百年前、南アメリカへ進出。 改めて驚くことだが、現生人類は全て「同じただ一つの種」ということだ。逆にいえば、400万年以上前にアフリカで誕生したヒト科の種族は、その子孫として3万年前頃までヨーロッパに存在したネアンデルタール人や東南アジアに存在したホモ・エレクトスを代表として多種多様の種族があったが、現在は現生人類のただ一種しか存在しないことだ。ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」のいう、人の集団に発展と力に不平等が生じるのは、集団ごとに人が生来もっている知性に差があるためではなく、機会が訪れるのが歴史的偶然にまかされているためだという主張が、当てはまる気がしてならない。 こでまで、時間レンジの非常に長い地球上の生命の誕生や、逆に時間レンジの短い人類の社会的発展の歴史などの書籍は読んでいたが、人類を対象とした中間レンジの歴史にスポットを当てた本は読んできていないことを改めて知った。もっともっと知ろうと思うし、知らなければならないとも思う。名著でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.02.11 18:24:08
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