健康、長生き、アンチエージング

世の中に難病に苦しんでいる人は多い。

しかし、病気と診断されず病名もつかないで、その症状に苦しんでいる気の毒な人も多くいる。

医学がまだ追いついていないのである。 

風に当たるだけで「痛い」、痛風のことではない。

痛風なら発作時だけ足の親指付け根が痛いが、この痛みは全身、あらゆるところである。

線維筋痛症、やっと病名がついたが、あまり知られていないので、見過ごされている人も多い。

しかし、まだ保険適応されていない疾患なので、患者は経済的な面と二重に苦しめられる。

政府はいつものようにチンタラしていないで、患者さんのため何にも増して迅速に対応処理を計るべきである。

　横浜市の橋本裕子さん（５２）は、４０年来、痛みに悩まされてきた。

　初めは１０歳のころ。左足親指の付け根が痛んだ。歩くと涙ぐむほど痛み、整形外科で「関節炎」と言われた。痛み止めの注射でも痛みは引かず、体育の授業はほとんど見学した。

　痛みの範囲は広がり、１６歳の時には両足のひざから下が痛くなった。病名は、はっきりしない。大学生のころ、両腕も痛くなった。

　大学院を修了、大手書店や損害保険会社で働いた。「痛いのが当たり前の状態。痛みを忘れようと、朝早くから夜遅くまで働きました」。損保会社では営業職で、成績は常にトップクラスだった。

　７年前のある週末、自宅で全身を激痛に襲われ、失神した。月曜になっても意識が戻らず、無断欠勤を心配した会社の同僚が訪ねてきて、倒れているのを見つけた。救急車で運ばれ、８か月入院。会社は辞めた。

　この時、初めて「線維筋痛症かもしれない」と言われた。この疾患に詳しい篠ノ井総合病院（長野市）リウマチ膠原（こうげん）病センター・リウマチ科部長の浦野房三（ふさぞう）さんにメールで相談すると、近くの病院を紹介され、２００２年、線維筋痛症と診断された。「やっと病名がわかって、ほっとしました」と振り返る。

　痛みについて、橋本さんは「体の中をガラスの破片が駆け巡る感じ」と表現する。呼吸すると胸が痛み、食べ物をのみ込むと、のどが痛い。テレビの音も体に響き、外出して風に当たるだけでも痛い。人ごみで人とぶつかると、新たな痛みが加わる。これまで鎮痛薬や抗うつ薬など延べ２００種類近くの薬を飲んだが、痛みは今も治まらない。

　ホームページを作り、体験談を公開すると、「痛みで自殺を考えた」といったメールが寄せられた。

　「何とかしなければ」。０２年、患者会のＮＰＯ法人「線維筋痛症友の会」（（電）０４５・８４５・０５９７）を設立した。事務所には毎日、痛みに苦しむ患者からの相談電話がひっきりなしにかかってくる。

　厚生労働省研究班の調査によると、患者は日本に２００万人いるとされる。女性に多く、出産や事故、ストレスなどをきっかけに発症することが多いとみられている。

　痛みのほか、だるさや疲労感、うつ状態、不眠などの症状が出る人もいる。脊椎（せきつい）や手足の関節などが痛む脊椎関節炎など、ほかの疾患を併せ持っている例が多い。研究班メンバーでもある浦野さんは「３分の１程度の人が脊椎関節炎を併発している」と話す。

　今年２月、線維筋痛症だった女性アナウンサーが飛び降り自殺し、病名が知られるようになった。線維筋痛症の治療について探る。

　線維筋痛症　体のあちこちの筋肉や関節に３か月以上、痛みが続く。痛みの原因や発症の仕組みは分かっていない。米国リウマチ学会の診断基準では、全身に１８か所ある「圧痛点」を、指で約４キロ・グラム（ツメが白くなる程度）の強さで押し、１１か所以上が痛む場合、線維筋痛症と診断する。