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月の卵1030

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December 29, 2009
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その坂の名前は地獄坂、その名からも分るように非常に急な坂だ。坂は大きな住宅地のある丘に続く道。ちょっと前まではその片側がうっそうと茂った楢や椎の木で覆われていた。

今、その坂の木を切り倒して法面をコンクリートで固める工事をしている。

医者の帰りその地獄坂を息を切らせながら登って家に帰る途中。ちょうど坂に曲がり角に差し掛かるところで、工事中の鉄の手すりに何か動くものを発見。その物はするするすると鉄組みを動いていく。

「リスだ!」そしてそのすぐ近くにはそれをじっと伺うカラスが2羽。

カラスがさっとリスめがけて舞い降りた。つかまっちゃったかな。少し経つとからすは足に何もつかまずに横飛び移動した。「ああ、良かった。どうやら失敗したようだ」

近くの葉がほとんど落ちてしまった細い木が大きく揺らいでいる。その木にリスが2匹。枝の先へ先へ移動して行く。おそらくカラスから逃れて逃げているんだろう。しかし、その姿はカラスからは丸見え、木の根元の方にカラスが止まったら、もう枝先から先にリスは移動できない。地面へジャンプするには高すぎる。

ふと目をもう少し上の森の木の上に移す。そこには大きなトンビが獲物を探している。幸いまだリスには気がついていなようだが。

さて、どうしよう。

私は持っている傘で工事用の足場をカンとたたいた。その瞬間カラス3羽がいっせいに飛び立った。からすの飛び立ちを見送ってから木に目を移すと、リスたちが森の大きな木の枝に移動して木の葉の中に隠れて行くのが見えた。

自然界の摂理を犯してしまったかな。しかし、リスたちから塒を奪ったのは私たち。この丘も元はと言えばきっと木々が生い茂っていたであろう大きな山。木を切り倒し、山を削り、谷を埋め、何百戸という住宅を建てた。

坂の脇の木がすべて切り倒された時、リスたちはどこに移動するのだろうか。

にっくきトンビに襲われた経験を持つ私は、持っていた傘をいつでも闘える体制に構えて、横目で上空のトンビを目視しながら坂をはあはあ言いながら登って家に帰った。






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Last updated  December 29, 2009 10:35:11 AM
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