いきる(2)
枇杷
中学に入るとすぐにバスケット部に入部した。
生家のすぐ近くにあった先輩が誘ってくれたからだ。
新入部員は僕だけだった。
スポーツの得意な人は野球部に入るのが普通だった。
遊ぶことにかけては誰にも負けないと思っていたが
野球には全く関心がなかった。
中学生になったら、本を読みたかった。
世界のこと、社会のこと、身のまわりのこと、
そこには、僕の知らないことがたくさん詰まっていると
漠然と思っていた。
それもできないまま、
バスケットに打ち込むことになった。
先輩の家に行くと、
大きな枇杷(ビワ)の木が何本もあって
五,六月ごろにはたわわに実がなった。
その実はとてもおいしかった。