『一命』――浪人の現実
昨日の予告どおり、今日は映画『一命』の、あらすじをご紹介します……。ごく簡単に。これも予告どおり。ときは江戸。戦国の世は終わり、一見平和な世が訪れたかのように見えた徳川の治世。しかし実際は、徳川の権威を示すため、幕府は多くの大名の御家取り潰しを行ない、町には仕事をなくし、生活に困った浪人であふれかえっていました。そんな浪人たちにとっての、最後の手段。それは、狂言切腹。裕福な大名屋敷に押しかけ、「庭先で切腹させてください!」と願い出るわけです。大抵のお屋敷は面倒なことに関わりたくなく、職や小銭を与えてお引取り願います。要するに、体のいいゆすりですな。この日も、井伊家江戸家老・斎藤勘解由(役所広司)の屋敷に、切腹を口実に初老の浪人・津雲半四郎(市川海老蔵)が訪れます。しかし。この斎藤勘解由という人物。「いかなる理由があろうとも、侍が腹を切るという狂言で仕官を目指すなどということが、あってはならない!」という、強固な理念の持ち主だったのでした……。この映画は、生活苦に追い詰められた浪人たちをクローズアップした、滝口康彦の『異聞浪人記』が原作だそうです。 一命 (講談社文庫) (文庫) / 滝口康彦/〔著〕やっぱり制作側は、貧困と格差が深刻化している現代の情勢を意識して、今回の映画化を決定したんでしょうね。民放時代劇なんかでは、浪人ってのは、カッコよく描かれることが多いですけど。『桃太郎侍』とか、『素浪人・花山大吉』とか。【23%OFF!】桃太郎侍(DVD)でも実際の浪人って、こんなものなのかも。武士にも、ピンきりいるわけで。この物語の主人公のように、普通の町人よりも悲惨な生活送って人もいたわけですな。