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カテゴリ:源氏物語
宰相の中将は思いあまり給う折々に、 恋愛経験豊かな人であれば、しつこく相手の気持を疑ったりもするのでしょうが、 「中務の宮が源氏の大殿のご意向を伺って、宰相の中将を婿君になさるようだ」 と、申し上げる人がいますので、お聞きになった内大臣殿は 「これこれの噂を聞きましたよ。宰相の中将は薄情な御心の人だったのですね。 かつて大殿がお口添えなすった折に、私が意地を張って応じなかったというので、 今更意気地なく先方の意に従うとしたら、物笑いになるでしょうね」 と、涙を浮かべてお話しになります。 姫君はひどく恥かしく、何となく涙がこぼれますので、 『どうしたらいいものか。やはりこちらが譲歩して、御機嫌伺いするしかあるまい』 と、思案にくれた内大臣がお部屋を出ていらした後も、 『わけもなく涙が流れてしまったけれど、この涙を父上はどうご覧になったかしら』 と、後悔していらっしゃる所に、宰相の中将から御文が届きました。 恨んでいらしてもさすがにご覧になります。たいそうこまごまと書いてあって、 「つれなさは 浮き世の常になりゆくを 忘れぬ人や 人に異なる (あなたは浮き世の女人と変わらず私に薄情になっていくけれども、 とあります。姫君は、 『私に恨み言だけはおっしゃるけれど、 と、お思いになって辛いのですが、 「かぎりとて 忘れがたきをわするゝも こや世になびく 心なるらん (忘れないと仰るけれど、私を見捨てて結婚なさるあなたさまこそ、 とお書きになりました。 男君はこのご返歌に合点がいかず『妙な歌だ』と、御文を手に持ったまま、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
September 20, 2013 02:06:52 PM
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