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私訳・源氏物語

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September 9, 2016
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カテゴリ:源氏物語つれづれ
源氏が女三宮と柏木の関係に不信感を抱いたのは、
紫の上の発病のどさくさあたりだったと思う。

このとき源氏は四十後半。
男性としての老いを実感する年齢だ。

ところが柏木は三十前後と源氏よりずうっと若い。

源氏にとっては自分の正妻格を寝取られた屈辱に加えて、
年齢差においても自尊心を傷つけられたに違いない。

相手が「若い」ということは、初老の(ましてお子が少ない)源氏にとって、
抗い得ない強烈な妬みを味わったのではなかろうか。

そう考えると、源氏の執拗な攻撃が納得できるし、
小説としては桐壺院よりずっと人間的で味があると思う。

 それから朱雀院。
私は、女三宮を心配する姿に、頼りがいのある父親の強さを感じた。

いつも源氏に気圧される気の弱い朱雀院が、
源氏の制止を振り切って愛娘の出家の願いを叶えてやるところなど、
感動的ですらある。

女三宮はこの頼もしい父親の存在あってこそ
「私は物のあわれも知らぬ者」と源氏に反発できたのかもしれない。
 

ところで夕霧という男性は実に不器用で、女二宮に対する気持ちを、
自分ではそれとなくほのめかしたつもり(そう書いてある)なのだが、
情緒のないあからさまな言い方で告白してしまうところや、
父・源氏の秘密を知ろうと探りを入れたのに、
反って二宮のことでお説教されてしまうところなど、
父親との格の違いを感じさせる。

私は以前から、恋愛できる人とできないタイプの人がいると感じているのだが、
夕霧は後者のタイプだと思う。

恋愛はサービス精神のない人には不可能な人間関係だからだ。
夕霧には相手の女性を思いやるやさしさやユーモアが欠如している。

真面目な男だからというよりも、上手に恋愛できないからこそ、
雲居雁と唯光の娘しか夫人がいなかったのではあるまいか。

多くの女性と関係を持つのが男の勲章とは決して思わないが、
こういった視点で人物を観察してみると合点がいくようで面白い。

 さて、横笛は短い巻だが、
三人の幼児たちが可愛らしく描写されていて楽しかった。

女三宮腹の若君・薫が、
祖父にあたる朱雀院から贈られた筍をかじる場面は可愛らしくて印象的だ。

明石女御腹の二宮と後に匂宮と呼ばれる三宮、それに柏木の子・薫の、
三人のお子達も実に愛らしく描写されていて、訳していても楽しかった。

彼らの伯父にあたる夕霧大将に抱かれようと競うところや、
薫をつくづく眺めて哀れに思う箇所に、
幼児に対する作者のリアルで優しい視線が感じられていい巻だと思う。

また、表面では同じように養育しながら、
薫を別扱いしている源氏の内心が語られているのも興味深かった。





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最終更新日  March 4, 2017 08:36:37 PM
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