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私訳・源氏物語

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April 9, 2018
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カテゴリ:源氏物語
『入道の宮(女三宮)がお輿入れなすった折にさえ、
お顔色にもお出しにならなかったけれど、
事に触れて辛さや情けなさを感じていらしたご様子は見て取れた。

お可哀そうなことをしたものよ。

三日夜の暁は吹雪も激しく、格子の外で待つ間は身も凍るような寒さであったが、
上はあたたかく優しく迎え入れてくれたことよ』

と、それにつけても、
ひどく泣き濡らしたお袖を引き隠しなどなさるお心遣いをお思い出しになり、
夜もすがら『夢にでもいい。あのお姿をまた見たいものだ』
とお思い続けになります。

明け方に、自分のお部屋に下がる女房でしょうか、
「まあ、ずいぶん雪が積もったこと」
という声をお聞きつけになりましても、あの時のような気がするのですが、
今は上がいらっしゃいませんので言いようもなく悲しくおなりです。

「憂き世には ゆき消えなんと思ひつゝ 思ひのほかに なほぞほどふる

(雪が消えるように、私も辛い憂き世から消えてしまいたいと思いながら、
こうして生き長らえてしまったものよ。
春が来ているのに思いのほか降る雪のように)」

お悲しみを紛らわせるように手やお顔を洗い清めて、
いつものように読経をなさいます。

埋火を起こし給いて火桶にお入れになり、
中納言の君や中将の君などを御前近くにお召しになって
御物語をおさせになります。

『昨夜は独り寝がいつもより寂しく感じたが。
こんなふうに心を澄ませて仏道修行をしている身なのに、
つまらない浮世に関わってきたものだ。
しかし私までが出家してしまったら、
見放されたこの哀れな女房たちがどんなに嘆き悲しむことか』

とお思いになりながら、皆を見渡していらっしゃいます。

忍びやかに読経なさるお声は、たとえ何事もない時でさえ涙を誘いますのに、
まして大殿を見たてまつる女房たちは堰き止められぬほど涙が流れ、
明け暮れにつけ悲しさが尽きないのでした。





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最終更新日  April 9, 2018 10:53:17 PM
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