エピローグ:この地一周を達成して
疲れた。足が痛い。雨が冷たい。お腹が減った。暑くて倒れそう。でも、楽しい。自転車旅は苦難の連続だった。それでも次に出てくる言葉は、常に「楽しい」だった。ボクの口の端は、だからいつもどこか緩んでいた。寄せてくる様々な苦しみを、どこかで楽しんでいたのだ。都会のサラリーマン暮らしの身には、すべての苦しさが、新鮮だったから。こんな楽しい趣味を見つけられて、ボクは幸せだとつくづく思う。最初はノリではじめた自転車旅。それが結構楽しくて、続けてしまった。一言でいえば、そんな旅だった。自転車という移動手段が、絶妙な思い出製造機であったこと。この出会いは、なによりラッキーだった。16インチ内装3段変速という自転車は、これまでの旅用自転車の定説からするとあまりに貧弱と思われた。ランドナーのようながっちりした車両に大量の荷物を積まなければキャンプ旅なんてできないと思っていた。しかしそんなことはなかった。キャンプ道具を最小限にして、自炊や多くの着替えを持たなければ、そしてルートをある程度整備されたアスファルト道にすることで、この小さな自転車でも十分な性能だった。この小さな自転車でよいところもあった。平均スピード’12~14km/hという、自転車としては低い速度が、その場所の雰囲気を、まったく正確にたくさん味合わせてくれるのだ。ほかの交通手段では、絶対に、こうはいかない。ここまでお読みいただいた皆様に、一言推奨したい。ぜひ自転車に乗ってください。人間の生活は、このくらいの移動手段で足りるのだ。そう気づくことができます。そうすれば、その次に未来にすべきことが、おのずと見えてくるのですから。年年歳歳花相似歳歳年年人不同ありがとうございました。・・・最後の駅そば、閉店していて、食べられなかったのだよなぁ。未練は、また次の旅につながるのだよなぁ・・・