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2017.05.02
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カテゴリ:書評・読書メモ

劉建輝「魔都上海 日本知識人の「近代」体験」(ちくま学芸文庫)

2010年刊



 上海を上海たらしめていた魔性の正体とは?


 それは、全く異なる2つの空間にある。

 1つは、旧上海県城を中心とする700年もの歴史を持つ伝統的な空間であり、

 もう1つは、わずか150年余の歴史しかもたない、いわゆる「租界」である。



 上海を訪れた日本の文人の反応・・

 谷崎純一郎は、中国横断のツアーに参加しているが、

 特に南京・蘇州・上海といった南方の都会に感銘し、

 「上海に一戸を構へてもいいくらゐに思つてゐた」というぐらい

 上海のことが気に入っていた。
 



 一方、同様のツアーに参加した芥川龍之介は、四か月にわたって中国各地を旅行する。

 特に、上海は1か月半ほど滞在するが、前半の3週間は胸膜炎で入院し、

 退院してから、精力的に行動したという。

 そのこともあってか、「このカッフェはパリジァンなぞより、余程下等な所らしい。」

 などと、「下品な西洋」と断じている。



≪彼は半植民地である上海の「混沌」にひどく当惑し、みずから夢見た

 「詩文にあるやうな支那」をもって「猥雑な、残酷な、食意地の張つた、

  小説にあるやうな支那」を厳しく裁断した。≫ 

 しかし、芥川は、横光利一に、一度は上海を見るべきだ、と薦めている。



 


○日本脱出という夢

≪ところで、日本にとっての上海にはたした役割は、明治期に入ると急速に変わりはじめた。

 それはむろん日本が自ら「文明開化」を標榜し、直接欧米から近代諸制度の導入を

 開始したために、従来の「中継地」としての上海がほとんど意味を持たなくなったことによる。

 しかし、より根本的な原因は、むしろナショナリズムを基盤とした求心的な「国民国家」

 を推進する明治日本にとって、半植民地でまったくナショナルな「アイデンティティ」を

 持たない上海の「近代」は、一種の「脅威」でこそあれ、けっして従来のような西洋文明

 の「最前線」として仰ぐべき対象ではなくなったところにあると思われる。≫


≪上海という存在は、いわば「近代国家」のナショナリズムを超越し、中国や日本はもちろん、

 欧米諸国といった、特定の国に所属せず、完全に「自由」な新天地として、

 まったく新たな役割を背負わされたのである。

 それは近代国家の統率がいよいよ強固となりつつある「閉塞的」な日本からみれば、

 まさに「ロマン」を托すべき対象であり、「冒険」の夢を実現させてくれる恰好の土地であった。≫





<目次>
プロローグ 二つの「上海」
第1章 サムライたちの上海
第2章 東アジア情報ネットワークの誕生
第3章 日本の開国と上海
第4章 「ロマン」にかき立てられた明治人
第5章 魔都に耽溺した大正作家たち
第6章 「摩登都市」と昭和
エピローグ 上海からみた日本
補論 上海ビッグバン―魔都、その後





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最終更新日  2017.05.02 23:16:55
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