女子高生からの「助けて光線」
せんだって電車に乗っていたら、女子高生がすごく悲しそうな顔をして携帯電話をいじっていたんです。 メールなのか学校裏サイトなのかモバゲーなのかわからんが、すごく悲しそうなのですよ。 私が言うのもなんですが、これがまたドエライかわいいコで。 街で、ナンパ的に声をかけるとしたら「ねえ、もうどっか事務所に入っちゃってる?」という言葉を選ぶ程度にはかわいい、というか美しい。清楚、なんでしょうか。気品、というのでしょうか。高そうなんですよ。 そんなコが悲しそうな顔をして、携帯電話をガチガチいじってる。 見てると、長い睫毛が少し濡れてきてる。瞳は大きい。 涙を流すとかいう派手な泣き方ではなく、睫毛が濡れるほどというあたり、またまたこう、品があるじゃないですか。気になるよね。 だから気にして見てたんですよ。 そしたらそのコが気がついてこっちを見たんです。 やべえ。キモいおっさんと思われたら寂しいっ! いぶかしがったり、睨んだり、すぐに視線をそらせたりすると思ったら、その女子高生は悲しそうな瞳のまま、私を見つめ返したのです。 もうこちとら大恐慌ですよ。 うわっなんだこの子、そんな眼でオレを、悲しそうにオレを、なんらかのコンタクトを望んでいるのか、しかしオレにそんな覚悟も度胸もありません小さい男なんですごめんなさいごめんなさい、うわあこのまま目を合わせ続けたらホントに接触しないといけなくなるじゃないか、どうするどうするオレ、あのコ泣きそうな眼ですげえ見てるじゃないか、どうするったって責任とれねえし、ああもう負けた。 目をそらせてしまった。 呼吸としては、メンチの斬り合いで負けました。 なんでか知らないけど、ものすごく純粋な瞳にまっすぐ見つめられては、耐えられない。薄汚れた私は、耐えられない。 そしたらその女子高生はまた携帯電話と向かい合ってしまいました。 ああ、せめてあのコが悲しい顔をせずに素敵に笑って過ごせますように。 そんな世界を作らなければいけない。可憐な女子高生がせんだって日記の中のオッサンに向かって「助けて光線」を出さなくて済む、楽しい世界を作らなければいけない。 夕日に向かって強く誓い携帯電話を握り締めるせんだって日記の中のオッサンなのでした。