テーマ:ワイン大好き!(30435)
カテゴリ:エッセイ
研修の期間中、私が過ごした会社の寮は工場まで徒歩10分ぐらいのところにありました。老朽化したボロボロの建物で、タタミ6畳の部屋に2人で万年床を敷いての生活でした。私が生活していた1階の部屋はジメジメとしていて、たまにゲジゲジが畳の隙間から現れたりしていました。ムカデにかまれた同僚もいました。食事も出されるのですが、あまりに「貧相で不味い」ため、みな工場で食べるか、外食にしていました。同じ寮の期間工の中には気性の荒い人もいて、風呂で湯がかかったかからないで喧嘩になったなんて話も時折耳にしました。
いろいろな意味で、劣悪な労働環境、居住環境でした。 そんな実習生活も3ヶ月の辛抱。工場からの行き帰りに、寮の前に広がっている田園風景を眺めながら、この田んぼの稲穂が黄色く色づくころには東京に帰れるね、などと会話をしていたものです。 ところが、実習期間も2ヶ月を過ぎた8月頃になって、耳を疑うような話が飛び込んできました。 「円高が急激に進んで厳しいので、その対策として、期間工の採用を絞り、代わりに新入社員の実習期間を延ばして、今年度いっぱい工場で働かせることを会社が考えている」というのです。 たちの悪い噂だと信じたかったです。いくらなんでも、まさか会社がそんな理不尽なことをするわけなかろう、と思いました。 ところが、火のないところに煙は立たず、とはよく言ったもので、ある日、実習生全員が集められ、本社の人事担当者から、3ヶ月の実習期間を延長して翌年3月までとする旨の発表がありました。実に6ヶ月の延長。7月から翌年3月まで、私たちはまるまる9ヶ月工場で働くことになりました。 この発表を聞いたときの無力感脱力感をうまく文章で表現できるだけの語彙と文章力を私は持ち合わせていません。ようやくあと1ヶ月で終わると思っていた苦行のような生活が、突然6ヶ月延長されるという、あまりの不条理さ。田んぼの稲穂が黄色く色づくころには帰京して正規配属になると思っていたのが、収穫を終えて、翌春の田植えのシーズンまでライン勤務が続くというやるせなさ。労働に対する苦痛もさることながら、会社に裏切られたという思いが半端でありませんでした。 実は私もこのとき、真剣に会社を辞めようかと思い立ち、有休をとって帰京して、大学の学生課に相談に行ったりしました。しかし、いわゆる第二新卒的な転職が一般的でなかった当時、卒業したての学生を採用しようという企業はほとんどなく、かといって、学科の劣等生だった私に、大学に残るという選択肢もなく、泣く泣く鈴鹿に戻ったものです。 工場実習の思い出。 工場実習の思い出〜その2 工場実習の思い出。~その3 工場実習の思い出~その4 工場実習の思い出~その5(実習期間が9ヶ月に延長) 工場実習の思い出~その6(亀山市でヤクザに監禁される) 工場実習の思い出~その7(亀山でヤクザに監禁されてその後) 工場実習の思い出~その8(名古屋でヤクザの車に追突) 工場実習の思い出~その9(続・名古屋でヤクザの車に追突) 工場実習の思い出~その10(名古屋でヤクザの車に追突その後) 工場実習の思い出~その11(痔で歩けなくなる) 工場実習の思い出〜その12(痔で動けなくなってその後) 工場実習の思い出~その13(駅伝の練習ってマジですか??) 工場実習の思い出~その14(駅伝ってマジ?~その後) 工場実習の思い出~その15(ジョブローテーションでさらにキツイ仕事に…) 工場実習の思い出~その16(ジョブローテーションでキツイ仕事に…) 工場実習の思い出~その17(ラインの同僚のこと) 工場実習の思い出その18(休日の過ごし方) 工場実習の思い出~その19(友人とそのフィアンセの話) 工場実習の思い出~その20(もうひとりの友人のこと。) 工場実習の思い出〜その21(実習終了間近なれど…) 工場実習の思い出~その22(実習終了) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021年11月19日 10時24分56秒
コメント(0) | コメントを書く
[エッセイ] カテゴリの最新記事
|
|