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カテゴリ:ラノベ
外伝を別とすれば銀河英雄伝説は全10巻。ちょうど5巻は折り返しに来た形になる。ある意味で,ここが第1部完結みたいなところもあるが,感想を書いていく。表紙はたぶん,帝国軍の軍服を着ている金髪の男性だからミッターマイヤーかな。彼もまた,この巻の主要キャラになる。
銀河英雄伝説(5) 風雲篇 (MAG Garden NOVELS) [ 田中芳樹 ] なんといっても,ハイライトはバーミリオン星域会戦だ。ラインハルトとヤン・ウェンリーが総指揮官として直接対決をするという,華々しいものだ。 いや,この巻のハイライトどころか,銀河英雄伝説という作品全体を通して,ラインハルトとヤン・ウェンリーが直接対決をしたというバーミリオン星域会戦は最大の見せ場ということになるのだろう。 とはいえ,このバーミリオン星域会戦なのだけど,戦いに入る前から同盟の負けがかなり見えている感じにはなっている。 ヤンが放棄した結果とはいえ,イゼルローン回廊はロイエンタールによって制圧され,フェザーン回廊もミッターマイヤーが制圧してしまっている。戦略的に考えれば,もう同盟側には完全に後がない。袋のネズミ状態だ。 最終的に,ヤンは戦略レベルの不利を戦術レベルで補うため,戦場でラインハルトを打ち取るという作戦を取り,実際にもう一息でラインハルトを打ち取る寸前まで追い詰めたのだ。しかし,ヒルダやミッターマイヤー率いる帝国軍が首都ハイネセンを征服し,ハイネセンから停戦命令が来たため,しぶしぶヤンはこれに従う,こんな形だ。 これが普通の小説なら,どちらに勝たせればいい。素直にラインハルトを勝たせて皇帝にさせてもいいし,圧倒的劣勢のヤンが一気に巻き返すのもいい。 ところが,作中ではヤンが戦術レベルで勝ちながらも,戦略レベルで敗退する。こういうの歴史にモデルがあるのだろうか。それとも著者の完全な創作なのだろうか。 確か,高校生の頃の僕はこの展開にどうも納得がいかなかった。ヤンは停戦命令を無視すればいいのである。憎き帝国に勝つことができる。 こんな展開ではラインハルトのファンも,ヤンのファンも読んでいてストレスはたまるだろう。 大人になった今もこのバーミリオン星域会戦を見ていて色々と思うところがある。 作中でも指摘されているけれど,ヤンが停戦命令に従ったところで,命が助かる保証がないのである。最悪,A級戦犯ということで処刑されてしまう可能性すらあった。なので,保身を図るなら,別にヤンは停戦命令を無視したほうが良かっただろう。 では,停戦命令を無視したとして,この後はどうなったのだろう? これはもしや,旧日本軍が第二次世界大戦でやらかした軍部の独走という,そういうことになるのだろうか。旧日本軍の独走を糾弾するのならば,僕はヤンにも独走しないよういわなければならない。後世の歴史家とやらは,ヤンを非難するのだろう。 また,もし,ラインハルトが戦場で死んだとしても,帝国にはまだ各地で内乱を起こす不平貴族がいるようだし,ロイエンタールみたいな野心のある者もいる。 皇帝になろうと,適当な遺族を探してきて即位させ,実権を握る者もいるのかもしれない。 そうすると,停戦命令に従うべきだ,そういうことになってしまうのかもしれない。 容易には答えが出ない問題である。 ヤンに停戦命令を無視し,皇帝になってやるぜという覇王の気概があればと思うが,そうなったらそれは僕の好きなヤンではない。 ある意味で,こういう容易には答えが出ない問題が作中にあるからこそ銀河英雄伝説は名作として読み継がれているのかもしれないが,どうもやはりスッキリしないなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.08.05 16:25:44
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