ニワトリの脚の指を食べて腸を丈夫にしよう
さえ:赤ん坊が生まれると母乳で育てるのが一般的ですが、母乳の出が悪いなどの理由があると人工乳で育てます。さらに女性が母乳で育てると自分の容姿に関係するからという理由で早々に母乳哺育をやめて粉ミルをで作った人工乳に切り替えることが、一頃米国で、そして日本で、流行りましたね。いまの日本では母乳が良いということになって、一時流行した人工乳哺育は下火になりつつあります。アメリカに疫学調査では、母乳育ちは人工乳に比べて消化器の感染による病気が50%少ないという結果を出しています。(資料1)母乳の何か良いのかというと、IgAが含まれているからとか、子供の腸内細菌叢を助けるからとか、いろいろと言われています。日本のサイトを見ると、母乳を飲む方が子供のインシュリン分泌が高くなるので消化を助ける、あるいは、子供が便秘しにくいとか言われています。最近のJBCに、面白い論文が出ました。(資料2)これによると、母乳に含まれているヒアルロナン(HAと省略しましょう)が小腸上皮細胞に働いて、細菌をやっつけるディフェンシン2を分泌させるからだというのです。このHAは生体高分子の一つで皮膚、軟骨、関節液や結合組織に多く含まれているもので、分子量400万になる大きなそして含水性の高い分子ですよね。母乳で調べると、出産の後2ヶ月間はかなりたくさんのHAが母乳に分泌されています。この母乳由来のHAや、あるいは精製したそして分子量が35 kDaのHAをマウスに与えるとマウスの仔でも大人でも、小腸上皮によるディフェンシン2の分泌が高まります。与える時にこのHAを分解する酵素で処理してしまうと、その効果がなくなるのでディフェンシン2を分泌させるのはHAであるということになります。ディフェンシン2というのは小腸上皮細胞やマクロファージが細菌の存在をTRL4によって感知すると、分泌する鉄砲玉のような分子で、細菌にあたると鉄砲玉が相手に穴をあけて細菌は死んでしまうのですよ。調べてみると実際に小腸上皮にTRL4が発現していることが大事です。それ以上の細かな機構はまだわかりませんが、母乳の中のHAが赤ん坊の腸内感染を防いでいることが明確に示されたのですね。マウスの大人でも、ディフェンシン2が増えるのも示されました。ということは、ヒトでもHAを食べれば腸内感染を減らせるということです。このHAは今では化粧品、スキンクリーム、ローションなどにも添加されていて、その供給元はニワトリのとさかです。あの赤い、ぶよぶよとした。。。この精製されたHAを食べ続けようと思うとかなりの費用がかかるでしょうが、手っ取り早く食べるとすると、ニワトリの足(ニワトリの爪)が良いです。皮膚にHAがかなり含まれています。ニワトリの爪は形が紅葉みたいなので、日本では鶏もみじと呼ばれていますが、まず普通には食べないので手に入りません。しかし中国では食肉を売るところでは当然手に入りますし、スナック菓子としてもいっぱい売られています。イギリスではこれまで捨てていたニワトリの足が売れることがわかったというので、回収して中国に輸出を始めるというニュースを読みました。(資料3)中国での衛生状態は日本に比べると概して良くないのですけれど、それでも大して悲惨なことにならないのは、彼がこのニワトリの爪を非常に好んで食べるからではないか、というのが、ぼくの今日の発見です。さ、今日もまた、おやつにどうぞ。(資料1)Howie PW, Forsyth JS, Ogston SA, Clark A, Florey CD. Protective effect of breast feeding against infection.BMJ. 1990, 300, 11-16. (資料2)Hill DR, Rho HK, Kessler SP, Amin R, Homer CR, McDonald C, Cowman MK, de la Motte CA. Human milk hyaluronan enhances innate defense of the intestinal epithelium.J Biol Chem. 2013, 288, 29090-290104. (資料3)「英国の廃棄物が中国ではごちそうに!英閣僚、直ちに輸出すべしと提言―中国メディア 」 Record China 2012年11月24日