テーマ:毎日、一歩一歩。(2526)
カテゴリ:ワク・ワクの一歩一歩
一夜明け・・・未だ興奮覚めやらない状態のゆみ。 三日間、夢の中でもイタリア語が回っていた。(うなされていた?) ゆみにとって、ゆみ歴最大の挑戦が始まったこの三日間。 世間では三連休だった。ゆみにとっては、自分に挑む三日間。 三日間それぞれに、昼間は別の使命があった。 それだけでも十分忙しいのに、夕方から夜中近くまでの時間、ゆみは「挑戦」を選んだ。 都内某有名レストラン。 昨年クリスマス、ゆみはボスに言った。「雇ってもらえないかな。」 これは単に、金欠に苦しむゆみがクリスマスの仕事場を探してのことだった。 「聞いてみる。」と言ったボスの答えは、「足りてるって。」だった。 「年齢制限かな?」とゆみが聞いたら、「それもあるだろうね。」と言われた。 ちょっとくらいレストランの経験があるとか、ワインの知識がある、とか言うよりも、 やっぱり若くて、美男美女じゃなくちゃ、イメージに合わないのだろう。 ゆみなんかが入るより、イケメンのオニイチャンのほうがいいんだろう。 その話はすっぱり諦めていた。 一歩、一歩と言うけれど、知らない間にそのチャンスは、少しずつ近づいてきた。 今年になって、そのレストランの前菜を紹介する、という仕事が何回か回ってきた。 支配人さんから、レストランの様子を聞くことがあった。 どんな芸能人が来るか、とか、どんなテレビ取材があったか、とか。 ホームページで見たら、とても行きたくなるようなお店だった。 ボスも「一度、お客さんで行こうね」と言ってくれていた。 が、思いがけずボスが現場から退いてしまった。 でもゆみには仕事の依頼が来て、またレストラン関係の外班事業部になった。 そして、先日のワインフェア。 レストランが銀座に出展。 ワインフェアで、レストランの仕事を任せてもらったのはなんと、ゆみだった。 1杯4700円のラトゥール、4500円のマルゴーなんかを出すレストラン。 これは日記に何日も書いちゃうくらい、ゆみにとっての事件だった。 でも慣れてしまえば、というか、コツをつかんでしまえばなんでもできる、のはいつも同じ。 なんとかこなしていくうちに専務から声がかかった。 「クリスマスのレストラン、手伝ってよ。」 え?ホントですか? 「ダメ?イーネ・イーネがあるから無理かぁ。」 あ、いえ、イーネ・イーネはソムリエを取った子が入りますから・・・ 「じゃ、決まり。2階の責任者ね。」 は?なんと言いました? 「出来るでしょ、マダム。二階三部屋、4人つけるから。」 うわあ!いつのまにかすごい話に・・・ その話が来てから、ゆみはそれがどんな話なのか、考え始めた。 いつも、「それってどういうことですか?」とゆみが話を持ってくのは、 言わずと知れたマスターのとこ。 「本当にマダム待遇だったら、すごいことなんですけど。(注、ありえないと思ってる。) クリスマスの人気レストランなんて、ゆみちゃんのよさが引き出せるとは思いませんね。 人と差がはっきりつかないから、だったらケーキ売ってたほうがいいかも。」とマスター。 でもゆみにしたら、ケーキ売るほうが誰でもできる仕事だと思った。 例え倍の量売っても、べつにゆみの評価にならないのは同じでしょう。 だったらチャレンジしたい。 納得のいく答えが出なかったので、他の友人にも相談。 ホームページを見せて、「この部屋なんだけどどう思う?」と言ってみる。 「うーん、雰囲気的にはイーネ・イーネに似た感じの路線だよね。かけ離れてはいない。」 そう、大きなレストランだけど、フロアは小分けになっていて、一個ずつがイーネ・イーネ。 そんな感じ。 まったくワンフロアの緊張した空間ではなく、それぞれがアットホームな 田舎っぽいレトロっぽいインテリアになっていてまさしくゆみ好み。 「ゆみは、やりたいんだろうねえ。」と友人。 「うん。きっとそう。やりたいと思ったことは、できること。そう信じたい。」 一番ゆみを力づけたのは、Ricaの言葉だった。 「いいじゃん、すごいよ。たった一回だって、ものすごい経験じゃん。 クリスマスとお正月にこの店を手伝いました。。。と言ったら、ゆみちゃんのキャリアに ハクがつくよ。最高のステイタスじゃん。あたしは頑張ってほしいなぁ。」 そっか、そうだよねー。 「ゆみちゃん、もうハクとかステイタスはいらないでしょ。」って意見もあったけど、 やっぱり、今ある中での最高峰に挑戦することって、ゆみの中では大事なこと。 もっと楽で高給な仕事はまだほかでも来る可能性がある。 レストランはハードな割には報酬が安いのは知っている。 でもやりたい。 なぜかと言えば、たぶん好きだから。 だから高いハードルだけど、飛んでみたくなる。 飛び越せなくても、どっかには着地するでしょう。 飛ぶなら今。チャンスは一回だけ。 そうこうしてる内に、また声がかかる。 「11月23,24,25はどうかな?お試しでやってみない?」 「はい!やりますー!!」 とっさに答えていたゆみ。 とうとう当日になった。 実はたぶん、エステに通っていたのはこのためだ。 深層心理の中で、少しでも受け入れられる容姿になりたいと願っていたのと、 カラダのコンディションを整えておかないと、 三日間踏ん張れないと思っていたからだ。 この日は、朝早くからイーネ・イーネの特別デーの仕事。 家から車を出してもらい、一緒に働きに行く。一年に二回くらいそんな日がある仕組み。 仕事を三人で片付けて、4時までは自由時間。念入りにワインについてマスターに聞く。 テーブルサービスのトーションの使い方、シャンパンの開け方。おすすめワイン。 「ゆみちゃん、無理です。出来ないとは言えないなら、”できるけど、教えてください” と言ってそこのやり方を習ってください。」 うーん。これがあとで大変なことに。 ゆみは意欲満々なのに、あんまり乗り気でない保護者二人。 「よく出来て、普通の評価。失敗したら、自分自身の格を下げますよ。」 「あんましゆみちゃん、得意な分野じゃないと思う。」 なにくそ。二人の経験者はそう言って出鼻をくじくけど、ゆみはもう決めちゃったよ。 「まあ、あの時と同じ。後はシェフとの折り合いもあるからねえ。 シェフは気難しい人が多いから。」 マスターは、何年か前のことを言う。 イーネ・イーネを止めたとき、出身地のマダムに、後継者としてスカウトされたことがあった。 そういう待遇で雇われることは、現場の人にとっては不愉快だったんだっけ。 あの時も日記に書いていたら、読んでくれてる人が「1ファンさん」として、 「止めたほうがいい気がする」とアドバイスのコメントをくれたっけ。 結局あのときの話はマダムが降りた。 「あなたは恵比寿で輝いてた。もっと都心で活躍できるわ。まだ地元に帰ってこなくていい。」 おかげさまで・・・都心の人気店から声がかかる身に成長しました。 というか、そんな縁にめぐり会えたってことだね。 ホントは、ドキドキしてるのは、こっちだ。 実は緊張で、胃が痛い。 でも力つけなくちゃいけないから、お昼は必死で食べた。 時間になった。 車で送ってもらう。 途中まで用事があってマスターも同乗。 ここで・・・おじさんたち二人は、もっと励ましてくれればいいものを、 ゆみには無理だ、的な話をする。 も~。 「ここからは、歩いていきなさい。」 え~~、なんだよぉ。でも乗り付けるわけにもいかない。 いざとなると、行かれない。 怖いよー。 なかなか車のドアが開けられないゆみ。 「行きたくないなら止めちゃったら? 他の仕事すればいいんだし。」 「イヤだ。行くよ。行きますよ。 大チャンスなんだから。やってみたいんだからさ。」 自分のタイミングでドアをやっと開ける。「行ってきます。」もう振り向かない。 いよいよだ。 やるしかない。 緊張を抑えて歩き出す。 さんざん写真やホームページで見た。 さも、自分のレストランのように、お客様に勧めていた。 でも、実際に行くのは、今日が初めて。 ボスが、「いつか行こうね。」と言ってたけど叶わず、 専務が「じゃあまず食べにいらっしゃい。」と言ってたけど、間に合わず仕事が先になった。 あ、あった!! 写真で見慣れたこのたたずまい。 大きく息をして・・・ 真ん中のドアを開ける。 「こんにちは~。」 と元気に言ったが、あとで思う。 なんで「おはようございます」と言わなかったのか・・・。すっかり緊張してた。 お店はまだOPEN前。 キッチンの奥に、皆さんが揃ってる。 どうやらまかないを食べてるらしい。 チラッと見て、何も言ってくれない人たち。 当たり前だよね。お客さんじゃないんだから、「ようこそ」って言うはず無いもんね。 一番若い人がコック服で出てくる。 「着替えますか?」 「あ、はい。」 「じゃあ、こっから階段上がって、上で着替えて、来てください。」 「なに着るの~?」 と、奥から声。 「ハイ、えーっと黒いブラウスとスカートで、ソムリエエプロン・・・でいいでしょうか。」 お返事が無いのはたぶんいい証拠。 ドアを開けると薄暗い中に木の急な階段。 さすが歴史ある建物。レトロ。 ぎしぎしと登ると、いっぱいコック服や荷物。電気つかない薄暗い部屋。 わぁ。いよいよだ。 まるでドラマの主人公になったみたい。 「バンビーノ」のテレビドラマを一生懸命に見てたこの夏、ゆみが自分がこんな経験を することになるとは思わなかった。 よくあるでしょう。漫画にさ。田舎からでてきた主人公の前にバーンと現れる建物。 最初から、フレンドリーに迎えてくれるとこなんてないんだ。まさしくあの感じ。 専制パンチくらい、食らうのだろう。 がんばるぞ!!乗り越えたら、きっと何かが突き抜けるはず。 でもゆみ、勇気出せんのかな。 元気よく下に降りて行けんのかな。 大丈夫。きっと大丈夫。 ここで負けたら、ゆみちゃんが廃るぜ。 ゆみが自分を信じなくて、誰がゆみを信じてくれんの!! ファイト。まずは神様、降りてって挨拶できる勇気をください。 どうなる??ゆみちゃん。 続く。。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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