想い出は心の宝石箱に。。。

　社長とは意思の疎通が簡単にとれたのですが、社長以外の社員はなんか​異星人
​

　のように思えました。基本的には​職人さん​ですから、その道には専門的な

　知識があります。しかし、皇子が前職で経験した、​​社会通念とか常識​​とは

　全く違う世界の人でした。

　彼らも、また皇子の事を、なんでこんな奴がいるのか？、という目で見ていたと

　思います。会長から直々に頼まれたのは、業績の悪化している郡山支店の再建、

　という命題でした。


　しかし支店長も代理もいる中で、彼らの​長年培われた職人気質を変える

　という事は、至難の技だったのです。

　そこで、​中堅管理職の意識改革​からとして、皇子が目をつけていた4名を

　再教育することとしました。毎週、昼休みの時間を利用して、課題を設定して

　みんなで討論する事としたのです。

　皇子が、彼等に

​（　パスカルは考える葦が人間だと言いました。それになぞって、君たちには
​

​　　考える足になって欲しい。何かの事象には、その起きた原因が存在します。
​

　　なして？との疑問。どうしたらいいのか？と、自らへの問いかけ。そして、行動

　　でそれを検証し、確認するという事です。

　　一歩踏み出せば、先に山があるのか？谷があるのか？見えてきます。そこで、

　　どうしたらいいのか？戦略・戦術を見直せばいいのです。　）

　と繰り返し説いたのですが、はたして理解してくれたのかどうかは、はなはだ

　疑問でした。

　支店には事務職として、女性が3人いました。

​　三人というのは必ずニ対一に別れるもので、ここも一番若い子とベテラン二人が、

​　なにかにつけて対立していました。

　その若い子が人懐っこく、皇子に何かと雑談や相談を、もちかけてきました。

　ネットのお見合いで、この彼がいいと思うんだけど、どうか？と・・

　​アラフォー・イケメン・ヨン様似のサン様​をネットでは標榜している皇子の

　こと、

　（　う～～ん・・・ネットでは、真偽の程はわからんから、注意した方が

　　　いいよ。）

　ねえ～、これって説得力あるでしょう？！

​　社長の高配で、支店内に皇子用の​個室​が、執務室として用意されていました。​

　夏のある日の午後、コーヒーを持って入室してきた彼女が、

（　あれえ～～、寝てる・・・・）

​（　寝てなんかないよ。会社の企業戦略を＜　沈思黙考　＞​中なの。）

　それを聞いた彼女は

（　ギャハハハ・・・・　）

　と、突然笑い出したのです。

　そして、

　​（　エッチ～～～～！　ちんちんもっこり、だってえ～・・・・）
​

　（　？？？？？？　）

　彼女が​沈思黙考​の意味を知って、かように切り返してきたのであれば、

　たいしたものなのですが、この語彙そのものを知らないのです。サウンドは確かに

　似ていても、意味はまったく非なるもの。諭すようにその意味を教えてあげると、

（　そんな言葉、誰も知りませんよう～～。嘘だと思ったら、他の社員に聞いて

　　みてくださいよ・・・　）

　それではと執務室から出て、若手の男性社員たちに聞きましたが、なんと

　＜沈思黙考＞の言葉を誰一人知らないのです。

​（　おい、それなら君の知っている、四字熟語を言って​ごらん・・　）

（　う～～～んと、う～～～んと・・　そうだ​焼肉定食！！！！　）​

  ＜　四字熟語　＞は大学国語入試や入社試験で出題され、教養の一つとして我々の

　世代では必死こいて覚えたのものでした。しかし、沈思黙考を含めてかような四字

　熟語も、若い世代間では​死語化​しつつあります。

　言語の死語化が加速された原因の一つは、外来語崇拝の風潮にあるのかもしれ

　ません。写真機がカメラへ、帳面がノートに代わるように、カタカナ語に負けて

　しまうのです。

　そしてもう一つは若者が年上を軽んじる傾向です。年配者が口にした難解な

　四字熟語などバカにするだけで、辞書をひいて調べようともしませんからね。



　　　　　　＝＝つづく＝＝　　　　​​

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