カテゴリ:民衆の歴史
デパートの誕生 番外編 ユニクロ(第4回)
経済学のイロハですが、「商品」には「価値」と「使用価値」の2つの要素が含まれており、この2つの要素が評価されて、はじめて交換が成り立ちます。これは高校で「政治・経済」の経済の部分を担当する先生がしっかりしていれば、履修した方は学んでいるはずのことです。 我々は、この価値の部分は、お値段で評価します。そして使用価値とは、この商品は使って役に立ちそうだという判断です。今話題にしている衣類を例に取りますと、色も柄もデザインも値段も気に入ったとしても、Lサイズの方にとって、SサイズやMサイズの服は役に立ちません。またサイズは程よくても、どう見ても似合わないと思うデザインの服もまた、使用価値があるとは思われません。 普通の庶民は、値段を気にしながら、自分にとって使い勝手の良い、気に入った衣服を選んで購入しています。そして、ユニクロら良質の商品を廉価で提供してくれるお店が登場し、普及するまでは、デパートや小売店でのバーゲンを睨みながらも、高値の商品を購入していました。アパレル業界やデパートは、第2回に指摘したように、まさに暴利と言って良いような高い利益率を誇っていたのです。 そして、デパートやアパレル業界が消費者に仕掛けたカラクリは、良質の商品を安く提供するユニクロなどの登場によって、広く消費者の察知するところとなりました。同程度の質なら、或いはこの質なら満足できると思えるのであれば、廉価な品が選ばれるのは当然です。 これは家電業界などで、今まさに薄型テレビの価格がかなりの勢いで値下がりしているのと同じ理屈です。薄型テレビの値下がりは、大量生産で原価の逓減法則が働き、その分値下げしても利益が出るからです。競争が超過利潤を享受する期間を短くしているのです。 ユニクロらのライバルと競争する立場になった、アパレル業界やデパートの置かれた状態は、家電メーカーが白物家電の生産に舵を切って以来、ずっとおかれてきた状態に、ようやく追いやられたということに過ぎません。 暴利をむさぼることを拒否して、企業努力で売れ筋新商品の開発を進め、薄利多売方式で利益を積み重ねようという、資本主義社会では全うな戦略をとる企業が、ようやく糸偏業界にも誕生した。これがユニクロの持つ意味でした。カラクリがばれてしまったデパートやアパレルのビジネスモデルは、もはや通用しません。 そしてユニクロは、日本で培ったビジネスモデルを引っさげ、世界市場に討って出ました。今のところ、各地で好評を博していると聞こえてきています。糸偏業界もデパートも変わるべき時に来ているのです。 もし変われないならば、斜陽産業として消えてゆかざるを得ないでしょう。やがて20世紀は「デパートの世紀」だったと回顧されるようになるのでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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