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原発事故を考える (2)
そこまでは良かったのですが、地震とともに外部からの送電が停止し、通常使っている冷却水循環用のポンプが使えなくなりました。これも想定のうちでした。ですからただちに、ディーゼルエンジンで動かす非常用ポンプが稼働したのです。ここからが想定外の事態になります。地震に伴う津波が、想定の2倍以上(想定値は5mでした)の高さに達し、しかも震源が岸に近かったため、到達までの間がほとんどなく、そのため軽油タンクが流されて使えなくなってしまったのです。 そこで、バッテリーで動かすポンプ(当然出力は弱い)で冷却水を循環させたのですが、出力が弱いために、次第に冷却水が不足勝ちになって、炉心(圧力容器)内の水位が下がり、燃料棒の上部がむき出し状態で、水上に顔を出すことになり、部分的な炉心溶融が起きてしまったのです。それは、1号機から3号機まで、稼働中の全ての原子炉で起きました。 燃料棒は水で冷却しないと、1時間ほどでわが身を覆う被覆管の金属(ジルコニウムです)部分が溶けはじめる温度を超えてしまい、溶融しはじめます。 燃料棒が溶融し、ウラン燃料ペレットが落下して炉心の底部にたまります。そのたまり方が運悪く密集した状態になると、核分裂が連鎖的に始まり、再臨界に達する心配が生じます。 そうなると、巨大な熱が放出され、炉心の本格的な溶融や、炉心爆発によって大量の放射性物質を巻き散らかしかねません。原子炉は圧力容器(炉心)と、その外側にある格納容器によって放射性物質が外部に出さないようにしているのですが、格納容器が壊れると、収拾のつかない大事故となってしまいます。 炉心溶融が起きた時、どのような条件下で再臨界が起きるのか、いろいろ調べてみましたが、私が理解できるような説明は、残念ながら見つけることが出来ませんでした。何とか、再臨界が起きないうちに、事態が終息してくれると良いのですが、事態は楽観を許さないようです。 さて、再臨界が起きなくても、ジルコニウム製の燃料被覆管が高温になると、水と反応して水素が発生します。炉心で発生した水素が格納容器内に出てきても、格納容器内には水素が爆発しないように、窒素が封入されています。しかし格納容器内の圧力が上がりますと、格納容器の破裂を防がなければなりませんから、外部につながる弁を開いて減圧することになります。 当然放射性物質が外に出て来ます。12日の最初の報道が、この段階を示していました。近くは放射能で汚染されますが、より広い範囲に大量に広まることを防ごうというわけです。そしてこの時に、放射性物質だけでなく窒素も放出されますから、窒素の濃度が下がって、格納容器 の内部で水素爆発が起こりうる状況が生まれます。 現在まで、福島第1原発で起きた水素爆発は、格納容器の外側(原子炉建屋の内側)でしか起きていませんので、建屋の屋根や壁は吹き飛きとびましたが、格納容器は大きくは壊れていません。 ただし、今後いずれかの原子炉の格納容器の外側でなく、内側で水素爆発が起きた場合、格納容器に大きな裂け目ができてしまうと、今までよりもはるかに多くの放射性物質が、大気中にに漏洩することになります。 一昨日15日からの状況は、どうやら3号機の格納容器の一部が破損した結果のようにも思われます。それでも、再臨界も格納容器の本格的な破裂も、共に現時点ではまだ起きていません。しかし、可能性としては十分に起こりえます。フランス政府を手始めに、各国政府が次々に自国民に対して、首都圏からの退避さらには日本脱出を勧告したのは、こうした重大な危険性を勘案したからと考えられます。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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