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テーマ:能、狂言、日本の伝統芸能(14)
カテゴリ:板に付く
2024/05/04/土曜日/穀雨の末期、7月の暑さ
ホール内アナウンスは人間国宝、人間国宝と喧しい。それが何よと鼻じらむほどである。 ご当人は本物であればあるほど耳汚し、そんな芸人であってほしいもの。 お上の権威箔付けなんぞ無用。 庶民は名人とか達人とか口に膾炙して褒め称えるだけでござります。 今回よいなあとしみじみ感じいったのは四世山本東次郎の太郎冠者、素袍落スオウオトシ 大杯を干すごとに酔いの回る振り、明るく正直で図々しい様もどこか憎めない。そんな人物を観る側以上に楽しく演じて何のけれん味も見せない。 笑顔が実によろしい。高砂の翁おもてな味わい。 間も無く米寿のこの芸を先々も楽しみたく、ぜひとも長く演じてくださいますよう。 観ている内にひょっとして落語は狂言の発展系?かと感じた。言葉のやり取りのスピード、間の取り方外し方、円熟、円熟。 アド2人、東次郎の弟で昨秋亡くなられた山本則俊さん長男の則重さん。 身体に恵まれたっぷりしている分、声量豊かにして美声。30年後どんな太郎冠者を見せるだろうか。 一番若い凛太郎さんは三世東次郎の芸風を引いたらしい、則直のお孫さん。あの固さが豪放磊落な狂言スタイルに発展していくか? 司会役を務められたのが、御歳96歳の馬場あき子さん。いや、これは凄い、とても信じられません。 この方はお年をとることを忘れてしまわれたのでしょうか。 淡い利休ねずに濃いめのグレーの帯、無地。帯留は濃いめベージュ、モダンで大変おしゃれ、そんな地味色なのに艶やかで目を惹きます。 話される内容も用意しているような、その場の雰囲気で如何様にも伸びゆくような。 短い時間に何とまあ、滋養に溢れた言の葉の贈り物 人というもの、かくありたい。 羽衣のワキ漁師は我は白龍と名乗るのも、室町頃に現れた能楽では珍しい。個別の名が付与された一般人なんぞツイぞいない時代の話で、その事に関心を向ける馬場さんは、音曲で露払いしながら仏教を中国に伝えた龍王伝説の行き着いた果てが三保の松原とみなす。なるほど! 天の原ふりさけ見れば霞立つ雲路惑ひて 行方知らずも 天女は羽衣を盗られ、みるみる内ウズの花もしおしおと、涙、汗、体臭、垢、天人五衰の相を呈す。 漁師は同情して羽衣を返すが、代わりに舞を見せてほしいと伝える。 その態度に馬場さんは、感心する。金品ではなく芸術を求めるのだ、一介の漁師が。 ワキ漁師、舘田義博。 なかなか風采がよく元気がみなぎっている。 羽衣がなければ踊れないと応える天女に、返してもらうと踊らずそのまま天に帰るのではないかと言われ、 いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを と返され、恥いる漁師は素直に天女に羽衣を返す。 さて、馬場さん。さすがにこの言葉で世相をちくりと刺す。 東遊の舞、序の舞、他天界の舞を踊り人間の住む地を寿いでやがて春霞の中に消えてゆく 春霞棚引きにけり久方の 月の桂の花や咲く げに花桂 色めくは春のしるしかや 面白や天ならで ここも妙なり天つ風 雲の通ひ路吹き閉ぢよ 乙女の姿 暫し留まりて この松原の 春の色を三保が崎 月清見潟富士の雪 いずれや春の曙 類ひ波も松風も 長閑なる浦の有様 さて友枝昭世である。彼の羽衣を白州家、武相荘庭で観たのはいつだったか。妙にドラマチックで、天女が肉的過ぎた記憶がある。 今回は美しさ儚さ蘇りを味わった。 後から知るのだが、今回付けた能面はいつもの小面ではなく、若女?面で、少し目の穴が大きくそれだけで体の負担が少ないのだとか。 考えてみればお三人の年齢は足すこと269歳! 平均年齢限りなく90歳! お元気の秘訣は毎日の肉食、お酒ですと! はあ〜〜蕎麦、高山茶は降参でございます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.04 13:57:08
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