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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2015.03.03
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カテゴリ:東日本大震災
先日、原子力損害賠償・廃炉等支援機構と静岡県弁護士会の共催で、原発事故による財物賠償説明会&相談会が開催された。

このイベントに先立ち、静岡県弁護士会では、原発事故賠償研修会を初級編と応用編の2回に分けて開催し、いずれも神田友輔弁護士(第一東京弁護士会)に講師に来て頂いた。熱い情熱をお人柄そのままの暖かく朗らかな口調にくるんで分かりやすくお話頂いた神田先生には、心から感謝申し上げたい。

私は、説明会の担当者だったため、直前まで準備に追われている状況だったが、追われていた割には、説明している計算の意味が自分でもよく分からなくなって、しどろもどろになったり、誤解を招く表現を時折使ってしまったりと、もう散々の出来で、反省点がエベレスト並みに山積みだ。
同席していた支援機構に所属するS弁護士には、随分助け船を出して頂き、もはや足を向けて寝られません・・・。
本当にありがとうございました。

今頃になって、ここを先に説明すれば良かった、この話はさらっと触れる程度で良かったのに時間をかけすぎた、等々、思い返すと悔しいやら情けないやら申し訳ないやら。

だが、同じ失敗を繰り返さないことが一番大事なので、しっかり反省して、次に繋げたいと思う。
説明をきちんとできない、ということは、理解がちゃんとできていない、ということを意味する。理解したつもり、では、分かりやすい説明はできないのだ。

私のぐだぐだの説明にもかかわらず、参加者の方の満足度は高かったのは、ひとえに、個別相談を担当してくれた静岡県弁護士会災害対策委員会の精鋭の皆さんのご尽力の賜である。みんな、本当にありがとう!!!

ただ、言い訳をするつもりはまったくないが、今回の説明会のメインだった、「住居確保損害」は、法理論的にも位置付けが難しい上、複雑怪奇、という表現がぴったりの難しい概念で、弁護士でも一読了解できる人はほぼいないだろうし、まして被害者の方にとっては、異国の言葉か呪文にしか思えないのではないだろうか。

こういう時こそ、専門家としての知識と経験を活かしてお役に立ちたいと心から思っているものの、今回の説明会の準備の過程で、弁護士と被害者との距離はこんなにも遠いのだ、とハッとする場面が幾つかあり、発信の必要性を強く感じたので、危機感が薄れないうちに書き留めたいと思う。

まず、今回の説明会、相談会は、支援機構の職員であるKさんに、献身的に広報頂いた。自治体、社協、被災者支援のNPO法人など、インターネットで検索できる情報も丁寧に拾って、挨拶回りを繰り返す。地道で根気のいる作業を朗らかにこなしていくKさんの姿勢には学ぶところばかりで、感銘を受けた。

しかし、これだけ丁寧な広報にもかかわらず、説明会、相談会の予約は、決して多いとはいえない、むしろ、思ったよりずっと少ない数だったこともまた現実である。
散り散りの避難を余儀無くされたことで、被害者のネットワークが確立していないことは大きな原因だろうし、貴重な休日、3・11も間近で、数時間もの予定を組めない人もいるだろう。

ただ、こうした原因はあるとしても、私たちが見過ごしてはいけない重要な原因のひとつが、弁護士に対する途方もない距離感にあることは真摯に受け止める必要があると思う。

Kさんにはまったく及ばないものの、私がこの説明会&相談会の宣伝を兼ねて参加した避難者交流集会では、こんな発言が聞かれた。

「私のところは、帰還困難区域ですが、せっかく来て頂いたのに申し訳ないですが、弁護士さんに相談することは何もありません。東電の社員さんが電話一本で駆けつけてくれて、私は、住所と名前だけ書けば、あとは何もしなくても進みますので、十分間に合っています」

「この間、交流集会に弁護士さんが来ていて、親切な対応だったので、相談しようと思って事務所に行く約束をしたのですが、その話を娘夫婦に話したら、『弁護士なんかに頼んだら何百万かかるかわからない。絶対にやめとけ』と言われたので、予約をキャンセルしました」



避難者の方々のあまりにも率直で素朴な声を聞くと、ショックを受けるというよりもしみじみと「こんなにも弁護士は普通の人にとって縁遠くて、身近どころか、できる限り遠ざかっていたい人種なんだ」と実感せざるを得なかった。

私が弁護士だからそれこそ自己弁護に聞こえるかもしれないが、弁護士は、こじれてしまいどうしようもなくなってから依頼するよりも、初期の段階で頼った方が、一般的には良い解決ができることが多い。
今現在困っている人の立場としても、多くの情報をわかりやすく提示してもらい、その上で、自分がもっとも望ましいと思う解決方法を選ぶ方が、ひとつしかない選択肢を選ぶよりずっと満足できる解決になる可能性が高いのではないだろうか。

また、費用についてもしかりだ。
一度相談したら最後、「何百万もとられる」なんてことは、あり得ない。相談をした上で、解決への筋道と費用の見通しを聞き、その上で、その弁護士に依頼するかどうかは、相談者が決めることで、弁護士が決められることではない。

むしろ、多くの弁護士は、できるだけ避難者の経済的な負担を軽くしつつ、その方にとって心理的にも金銭的にも最もよい解決をしたいと願っている。

現場の弁護士の想いとは裏腹の遠く敷居の高い弁護士像は、一朝一夕で変えられるものではないし、特効薬があるわけでもない。一人一人が一件一件を大切に誠実に取り組むことが、敢えていうなら一番の近道であり特効薬なのだ。

いつも思っていることではあるけれど、改めて強く思ったと共に、絶対に諦めないで、頑張ろうと思った。

色々と学ぶところの多かった説明会&相談会に関わったすべての方々に心より御礼申し上げます。





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Last updated  2015.03.04 02:42:23
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