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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2022.07.08
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カテゴリ:弁護士業務
先日、東京出張があり、空き時間にひまわり基金法律事務所赴任志望のSさんとお話する機会に恵まれました。
私のスケジュールの関係で、思ったより短い時間しかお話できなくて申し訳なかったのですが、真剣勝負の会話ってこういうことを言うんだなっていう感じの、白い刃がぶつかり合って煌めいてこぼれ落ちる光のキラキラがずっと辺りを漂っているような素敵な時間でした。ご自身のバックボーンに根ざした大きなぶれないビジョンを持って謙虚に自己研鑽を続けるSさんの姿勢にとても感銘を受けましたし、Sさんの輝く真剣を、これからもまっすぐ受け続け、対等に切り結ぶことができるように、私も私の剣をずっと研ぎ澄まして磨き続けていきたいなと思いました。


中でも、難しい事件、難しい依頼者ほど、自分を成長させる機会なんだよね、そこで逃げちゃいけないんだよね、という話の際に私の心の中に鮮やかに蘇ったエピソード、Sさんにお話ししながら、実は当時の心情を思い出してうるっときてしまったくらい大事なお話なので、ここにも書き留めさせて下さい。


あれは、相馬ひまわり赴任時代、弁護士2~3年目、20代の時でした。
多忙を極めていたある日、遠方から女性の相談者が来所されました。彼女曰く、地元の弁護士には、ほぼ全員に断られてしまったが、どうしても納得がいかない、女性の先生なら分かってもらえると思って、はるばるここまで相談にいらした、ということでした。
彼女の主張は、大まかに言うと、ある遊興施設に小さなお子さんを連れて行った際にお子さんが転倒して怪我をしてしまった、施設の責任を問えないかというもので、お気持ちは分からなくはないものの、施設側の過失を立証することはかなり厳しく、当然、彼女の希望されるような解決も実現不能と思われるケースでした。


その辺をどの程度丁寧に説明したのか、今となっては記憶がはっきりしないものの、私としては、私を頼って下さった方の期待に応えなくてはという思いや気負いもあったと思います。最終的に、代理人として介入し、施設側と交渉を始めました。


ただ、法的に難しいケース、交渉は当然ながら難航し、依頼者の要望とはかけ離れた金額の見舞金の提示以上の話にはどうにも発展しませんでした。依頼者は、ご自身の要望が通らないことにお怒りになり、福島県弁護士会に電話して、私の代理人活動への激しい苦情を述べられたようです。私は、当時の県弁副会長からお電話を頂いて、彼女の不満が私への苦情に発展していることを知り、驚くと共に悲しさ、悔しさ、恥ずかしさで一杯になりました。当時の私にとって、県弁護士会に電話されるというのは余りにも不名誉なことである気がして、副会長の先生が、ほとんど新人だった私を気遣いながら、とても丁寧に言葉を選んで私を励ますようにお話しして下さっていることは分かりつつも、お話を聞きながら涙が止まらなくなってしまいました。


この苦情自体は、それ以上深刻な段階に発展せずにおさまったものの、私のもやもやは一向になくならず、その後、仲良くなった先生方にお食事にお誘い頂いた際に、事件の顛末をお話して、それは事故みたいなもんだったね、災難だったねといった優しいお言葉を頂いて、心が少し慰められてほっとしていました。そう、本当に恥ずかしながら、私は思っていたのです。私は悪くない、あんな事件を持ち込んでくる依頼者が悪い、あんな事件受けなきゃ良かった、もうあんな筋が悪い事件は受けないって。そう思うことでしか、自分の心を整理することができませんでした。

そして、同じ話を、当時、非常に重い少年事件を共同受任していた関係で、頻繁にお会いしていた大峰仁先生にもお話ししました。私にとって、県弁護士会でもっとも敬愛する弁護士のお一人の大峰先生は、相槌を打つこともにこりとすることもなく、私に言いたいことをすべて言わせた後、ゆっくりと、次のようなことをお話されました。

 葦名さん、葦名さんのその事件から得た教訓は、「こんな事件受けなきゃ良かった、あんな依頼者の話は断れば良かった」なのかな。葦名さんがその事件から学んだことは、これからは勝てそうもない、立ちそうもない、難しい事件や、思い込みが強いタイプの人の相談は断るってことなのかな。そういうことなら僕は何も言わない。そういう弁護士になりたいなら僕が口を出すことは何もない。
 でも、葦名さんが、目指すべき弁護士の姿は違うんじゃないの。僕は葦名さんと接していて、葦名さんがそういう弁護士を目指しているとは思えないんだけど。
 僕は、その事件のことも依頼者のことも何も知らない。だから、中味に口を出すつもりはない。でも、そういう結果になったことについて、葦名さんが反省すべきことがあるんじゃないかって思うよ。葦名さんにも悪いところがあったんじゃないの。どこがどう悪かったかは僕は知らないけど、そういう反省の仕方をしないで、運が悪かった、あんな事件はもう二度と受けないっていう結論は葦名さんらしくないな、僕はそういう総括は好きじゃないから、葦名さんにもそういう総括で終わって欲しくない。

 ・・・本当に心にずしんと突き刺さり染み渡っていくようなアドバイスでした。今書いていても、大峰先生のお気持ちが、伝わってきます。誰も引き受けてくれない事件を受けてあげたじゃない、できるだけのことをしてあげたじゃない、不満を言われるどころか感謝されてもいいくらいじゃない、という傲慢な想いが自分にあったことに初めて気づき、心から恥ずかしく思いました。県弁副会長とお電話していた時にこみ上げてきた恥ずかしさとは全く違う種類の恥ずかしさでした。傲慢な自分、自分の行為を顧みずに人のせいにしてきた自分、失敗に真摯に向き合わず何も学ばない自分、余りにも情けない自分の姿がひたすら恥ずかしかったです。

 この出来事があったからといって、私が、失敗をしなくなったわけでも、すべての事件で依頼者が満足する結果をもたらせるようになったわけでもありません。でも、私は、少なくとも、失敗から逃走することはやめました。何が悪かったのか、どこをどうすれば良かったのか、そこに向き合わず目をつぶることは、私の目指すべき弁護士の姿では絶対にないから、それだけはやめようと強く思うようになりました。自分の失敗に向き合うことは本当に辛く大変なことで、感情も入るので、文字通り、言うは易く行うは難し、です。
 それでも、向き合うスピリット、これだけはこれからもずっと大切に持っていたいと思います。

 大峰先生、本当にありがとうございました。
 そして、このエピソードを引き出して下さった真摯な傾聴者Sさんにも感謝申し上げます。

 今日も謙虚に、そして、真剣に進んでいきたいと思います! 





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Last updated  2022.07.08 09:18:09
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