大迫力、ウィーンの「イドメネオ」
今日はプラハからウィーンまで、長時間のバスの旅(約5時間)。ウィーンではホテルに直行。というのも今夜は、モーツァルト生誕記念コンサートと並ぶ今回の旅のハイライト、モーツァルトのオペラ「イドメネオ」があるのだ。 「イドメネオ」は、モーツァルトが25歳のときに初演された、青春時代?の傑作オペラ。けれど内容が神話でなじみのないせいか、あまり上演される機会がない。2年くらい前に、北とぴあで寺神戸亮さんの指揮でコンサート形式の上演があり、それはすばらしかったのだが、その後日本で聴く機会はなかった。 だがさすが生誕250年だけあり、「埋もれた」(でもないが)名作にも、今年はばんばんスポットが当たっているのである。 今回の「イドメネオ」は、モーツァルトの誕生日27日が初日。あの小澤征爾氏が指揮する予定だったが、健康上の理由で降板、ペーター・シュナイダーがピンチヒッターとなった。 けれど、(ここだけの話?)私はシュナイダーになってよかった、と思った。小澤さんはオーケストラ指揮者としてはすごいけれど、オペラの指揮であまり感動した経験がないからだ。 ただ、今回の「イドメネオ」には小澤さんは大分打ち込んでいたらしいので、その点では残念ではあるのだけれど・・・・ ホテルで休憩した後、会場のアン・デア・ウィーン劇場へ出かけた。 この劇場は、以前はミュージカルなどをやっていた劇場で、私もあの「エリザベート」を、日本でブームになるはるか前に見た記憶がある。 それが今年から、国立オペラ座、フォルクスオパーに次ぐ第3のオペラハウスとして使われるそうだ。 実際、ラインアップを見ると、オペラとコンサートばかり。3月はアーノンクールの指揮で、モーツァルトの初期オペラである「ルーチョ・シッラ」がある。これも見たいな-! ドレスデンではほとんど見かけなかった日本人客、ここではさすがにまた大勢なのでありました。 で、その「イドメネオ」だけれど、ほんとうに素晴らしかった! 私は常々、本当にいいオペラの上演というのは、その作品がいかに素晴らしいかを知らしめてくれるものだ、とおもっているけれど、今回の「イドメネオ」はまさにそれだった。 指揮(ピンチヒッターなのに歌とすばらしく合っていたのはさすがベテラン!)、歌手(フリットリ、キルヒシュラーガー、キューマイヤー・・・名歌手ぞろいだから当然か・・・ただ主役のシコフは熱演だけれどモーツアルト・テノールではまだまだないと感じた)、合唱(アーノルト・シェーンベルク合唱団・・・いわずと知れた世界の一流、文句のつけようがありません)、そして演出(ウィリー・デッカー)の一体化した、ほんとの総合芸術のすばらしさを堪能した。 とくにすごかったのが指揮と演出。シュナイダーはモーツァルトを呼吸している!と感じた。ギリシャの古代劇場を思わせる階段を舞台上に設け、終始シンプルかつ劇的に展開したデッカー演出も秀逸。晴天から嵐に変わる場面で、合唱団が手にしていた青いパネルを一斉に投げ出し、裏面灰色を見せると同時に暴風雨をあらわす工夫など、衝撃的でした。 そして合唱!「イドメネオ」は合唱のオペラとよく言われるが、それをつくづく実感できたのはやはり合唱がすぐれていたからだとしか思えない。 今日の上演は、モーツァルトが見たら喜んだんじゃないかな。そう思わせられた、至福の一夜でした。 終演後はホテルのカフェレストランで食事。興奮さめやらず、余韻を楽しむ。本当はここまでがオペラなんだよね。東京みたいに、終わるやいなや帰宅時間を気にして電車に揺られなければならないのでは、オペラは本当には完結してくれないのです。