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カテゴリ:百人一詩
「雪」
小出 ふみ子 少女よ、雪は私の故郷、私の安息所。 その深いさびしさ かなしさ あなたが眠つてゐる間に 雪は静かに降り積る。 あなたが目を覚して この清らかな雪に そのつぶらな瞳を輝かして喜び かなしんだとしても そのかなしみの底には 故郷へ連なる愛がある。 天国へ連なる愛がある。 私の愛は何時もこつそりとあなたの身辺にふりそそぐ。 柔和な眼差しで あなたに気付かれぬやうに あなたが眠つてゐる間に降り積る雪のやうに。 そしてあなたが私の愛に気付いたときは 私は遠く去つてゐるでしよう。 高い山の上に あの春を前ぶれる白雲の浮ぶあたりに。 ああ 今宵もあなたの眠つてゐる間に雪が降り積る。 そのさびしさ 清らかさの中からサンタクロースが生れ そのサンタクロースを一層深いかなしさに清めるために 少女よ 私の故郷へ 私の安息所へ 雪が 静かに 降り積る。 ---------------- ほとんど無名に近い信州の詩人の代表作。『花影集』より。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.12.26 21:52:07
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