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カテゴリ:百人一詩
「旅客機」
近藤 東(あずま) あかつきに いどむかのように 巨大な旅客機が機首を東方にむけていた 空はすでに白々と明けはじめていた ときどき 銀色の翼が濡れたように光った すると 飛行場の一隅に 黒々とうごめいていた私たちの群から離れて ひとりの異国人が旅客機に近づき タラップをのぼると 大きく片手をあげた 一群は それにこたえて 両手をあげ 帽子を振った その人と私は いつ敵となるかも知れぬ 彼の背負っている国家と私の国家とが―― 私はだまって 手を振らなかった しかし旅客機は 私の感傷を黙殺したまま たちまち私の視野から消えていった 朝日のあがった雲の中へ ------------------ 非常に視覚的なので解説の必要もないと思いますが、来たるべき第二次世界大戦を予感させる詩です。今現在国家間の戦争は起きていませんが、中東各地で内戦状態が続いていることを思うと、決して時代遅れの作品とは言えないでしょう。 なお近藤さんは国鉄職員でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.03.27 10:01:50
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