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土井中照の日々これ好物(子規・漱石と食べものとモノ)

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2021.04.09
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カテゴリ:夏目漱石
   葉鶏頭団子の串を削りけり  漱石(明治32)
   花曇り御八つに食ふは団子哉  漱石(大正3)
 
 漱石が俳句に団子を詠んだのは2句ですが、数多くの小説に「団子」を登場させています。『吾輩は猫である』には、吉備団子と芋坂団子が出てきます。吉備団子は内田百閒が送ったもので、百閒の随筆『夜明けの稲妻』には「中納言の吉備団子屋は廣榮堂という。廣榮堂では昔、細い竹串にさした吉備団子を店で売っていた。今のように折に詰めたのばかりではなかったようである。折に詰めるといえば、折の中で団子と団子が食っつかないように、経木を格子に組んだ。桟の中に団子が行儀よく列べてある。私がまだ上京して東京の学校に入らない前、岡山名物吉備団子を夏目漱石先生に贈ったところ、請け取ったというお礼の手紙を戴き、その中に、団子は丸いとばかり思っていたが、吉備団子は四角いのだねとあった。経木の桟の格子の中で四角くなってしまったのである」と書いています。
「芋坂団子」は根岸の団子屋です。製造の澤野家・初代の澤野庄五郎は、加賀前田藩江戸屋敷に出入りする植木職人でしたが、文政2年に掛け茶屋を開きます。敷地に藤棚があったことから「藤の木茶屋」とか「藤茶屋」と呼ばれました。本店の南には根岸と谷中を結ぶ芋坂があるので「芋坂団子」で知られました。それが「羽二重団子」といわれるようになるのは、団子のキメが細かく羽二重のような舌触りだったためで、それが屋号となりました。
 
 せんだっては主人の許へ吾輩の写真を送ってくれと手紙で依頼した男がある。この間は岡山の名産吉備団をわざわざ吾輩の名宛で届けてくれた人がある。だんだん人間から同情を寄せらるるに従って、己が猫であることはようやく忘却してくる。猫よりはいつの間にか人間の方へ接近して来たような心持になって、同族を糾合して二本足の先生と雌雄を決しようなどという量見は昨今のところ毛頭ない。それのみか折々は吾輩もまた人間世界の一人だと思う折さえあるくらいに進化したのはたのもしい。(吾輩は猫である 3)
主人は芋坂の団子を喰って帰って来て相変らず書斎に引き籠ってる。(吾輩は猫である 5)
 
「行きましょう。上野にしますか。芋坂へ行って団子を食いましょうか。先生あすこの団子を食った事がありますか。奥さん一返行って食って御覧。柔らかくて安いです。酒も飲ませます」と例によって秩序のない駄弁を揮ってるうちに主人はもう帽子を被って沓脱へ下りる。 吾輩は又少々休養を要する。主人と多々良君が上野公園でどんな真似をして、芋坂で団子を幾皿食ったかその辺の逸事は探偵の必要もなし、また尾行する勇気もないからずっと略してその間休養せんければならん。(吾輩は猫である 5)
 
『坊っちゃん』の団子は、湯ざらし団子でしたが、小説が有名になるにつれて色をつけた団子三個を串に刺して売り出したものです。
 
 住田という所へ行って団子を食った。この住田と云う所は温泉のある町で城下から汽車だと十分ばかり、歩いて三十分で行かれる、料理屋も温泉宿も、公園もある上に遊廓がある。おれのはいった団子屋は遊廓の入口にあって、大変うまいという評判だから、温泉に行った帰りがけにちょっと食ってみた。今度は生徒にも逢わなかったから、誰も知るまいと思って、翌日学校へ行って、一時間目の教場へはいると団子二皿七銭と書いてある。実際おれは二皿食って七銭払った。どうも厄介な奴等だ。二時間目にもきっと何かあると思うと遊廓の団子旨い旨いと書いてある。あきれ返った奴等だ。団子がそれで済んだと思ったら今度は赤手拭というのが評判になった。(坊っちゃん 3)
 
 手持無沙汰に写生帖を、火にあてて乾かしながら、
「御婆さん、丈夫そうだね」と訊ねた。
「はい。ありがたい事に達者で――針も持ちます、苧(お)もうみます、御団子の粉も磨(ひ)きます」
 この御婆さんに石臼を挽かして見たくなった。(『草枕』2)
 
「そうそう、あの時は花がまだ早過ぎたね。あの時分から思うと嵐山もだいぶ変ったよ。名物の団子もまだできなかったようだ」
「いえ御団子はありましたわ。そら三軒茶屋の傍で喫(た)べたじゃありませんか」
「そうかね。よく覚えていないよ」
「ほら、小野さんが青いのばかり食べるって、御笑いなすったじゃありませんか」(『虞美人草』7)
 一人の一生には百の世界がある。ある時は土の世界に入り、ある時は風の世界に動く。またある時は血の世界になまぐさき雨を浴びる。一人の世界を方寸にまとめたる団子と、他の清濁を混じたる団子と、層々相なって千人に千個の実世界を活現する。個々の世界は個々の中心を因果の交叉点に据えて分相応の円周を右に劃かくし左に劃す。怒りの中心より画き去る円は飛ぶがごとくに速やかに、恋の中心より振り来きたる円周は燄の痕を空裏に焼く。あるものは道義の糸を引いて動き、あるものは奸譎の圜をほのめかしてめぐる。(虞美人草 7)
 
「昨夕は面白かったかい」
 女は答える前に熱い団子をぐいと嚥み下した。
「ええ」と極めて冷淡な挨拶をする。
「それは好かった」と落ちつき払っていう。
 女は急いて来る。勝気な女は受太刀だなと気がつけば、すぐ急いて来る。相手が落ちついていればなお急いて来る。汗を流して斬り込むならまだしも、斬り込んで置きながら悠々として柱に倚って人を見下しているのは、酒を飲みつつ胡坐をかいて追剥をすると同様、ちと虫がよすぎる。
「驚くうちは楽しみがあるんでしょう」
 女は逆に寄せ返した。(虞美人草 12)
 
 嵐山三軒茶屋は、嵐山の桂川沿いにあった茶屋で、建物は増築により、総三階建てとなりました。
 
「今夜は御誘い申しますから、これから夕方までしっかり御坐りなさいまし」と真面目に勧めたとき、宗助はまた一種の責任を感じた。消化(こな)れない堅い団子が胃に滞(とどこ)おっているような不安な胸を抱いて、わが室へ帰って来た。そうしてまた線香を焚いて坐わり出した。その癖夕方までは坐り続けられなかった。どんな解答にしろ一つ拵えておかなければならないと思いながらも、しまいには根気が尽きて、早く宜道が夕食の報知に本堂を通り抜けて来てくれれば好いと、そればかり気にかかった。 (門 18)
 
 車内のお延は別に纏ったことを考えなかった。入れ替り立ち替り彼女の眼の前に浮ぶ、昨日からの関係者の顔や姿は、自分の乗っている電車のように早く廻転するだけであった。しかし彼女はそうして目眩るしい影像イメジを一貫しているある物を心のうちに認めた。もしくはそのある物が根調で、そうした断片的な影像が眼の前に飛び廻るのだともいえた。彼女はそのある物を拈定しなければならなかった。しかし彼女の努力は容易に成効をもって酬いられなかった。団子を認めた彼女は、ついに個々を貫いている串を見定めることのできないうちに電車を下りてしまった。(明暗 77)





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最終更新日  2021.04.09 19:00:04
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