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テーマ:二次創作小説(943)
カテゴリ:「べるぜバブ」小説
BLの苦手な方は読まないでください。 あくまで二次創作ですから苦情は受け付けません。 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m 夏目はしばらく何もしないで黙って見ていたが、やがて こう言った。 「俺のことは殴んないの?」 「ああ。」 男鹿は少し考えてから返事をして、血のついたナイフを 夏目に手渡した。 「返すよ。顔を切るなら俺の顔を切れ。その代わり、 古市には手を出すな。」 「ハッ!バッカじゃねぇの?!」 男鹿の予想外な言動に夏目は眉をつり上げた。だが、男鹿は 「ああ。馬鹿だよ。俺は。でも、そんな俺でも古市だけは 守りたいんだ。」 と言った。すると、夏目は呆れたようにこう言った。 「お前ってホント、バカだな。神崎にそんなこと言ったら、顔 切り刻まれるぜ。」 「だろうな。でも、俺はあんたに言ってるんだ。」 「もし、俺が古市をまた襲ったら、どうする?襲わないって 保証はどこにもないぜ。」 「その時は夏目を殺す。」 男鹿は真剣な眼差しで言った。 「本気なんだな。もう、いい。消えろ。お前ら見てると、 イライラする。もう二度と二人とも俺の前に顔出すな。」 「分かった。」 男鹿は古市を連れて教室を出た。 二人を黙って見送った夏目は独り取り残された気分になった。 夏目はけっして男鹿に臆したわけではなかった。退屈な人生に ピリオドを打つのも悪くはないが、そこまでする必要がないと 思ったのだ。何があっても二人の仲は引き裂けないという事が 痛いほど身に沁みて分かったから、古市を諦める事にしたの だった。完敗だと夏目は思った。自分には到底真似できない。 男鹿の古市に対する無償の愛に成す術も無く打ちのめされた。 夏目は今まで生きてきて、欲しいと思うものが特になかった。 でも、古市だけは欲しかった。毎日、教室の窓から古市を見て いたのを男鹿は知っていたのかもしれない。古市を抱いたら、 手に入ると思ったのに、結局、何も変わらなかった。永遠に 手に入らない相手を愛し続けるほど馬鹿じゃない。諦めて 正解だと夏目は思った。初夏の夜風は涼しくて、夜空には 綺麗な星が浮かんでいる。もし、流れ星を見つけたら、 二人が別れるようにお願いでもしてみるかと夏目は思った。 これは恋なんかじゃない。ただの醜い嫉妬だ。いつまでも 気が晴れない心を持て余しながら、夏目は何度も自分に 言い聞かせた。片想いにも至らない夏目の淡い失恋を 夜空に輝く星たちは静かに笑っていた。 (完)
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