キャノンボール・アダレイ・アンド・ヒズ・オーケストラ 『アフリカン・ワルツ(African Waltz)』
普段とは違ったキャノンボールの側面を垣間見る 個人的な趣味・趣向をあまり押し付けがましく述べるのもどうかとは思いつつも、筆者はオーケストラものが結構好きである。CD店などで見つけたらついつい手を伸ばして購入してしまう。無論、オーケストラ編成だからと言ってみんながみんないいわけではないし、実際問題、当たり外れもある。そんな体験から、気に入った盤を少しずつ紹介したいと思い立ってはいたのだが、本盤についてはなかなか文章が整わかった。けれども、本当を言えば、他のキャノンボール盤よりも先に紹介したいと思っていたほどお気に入りである。 キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)と言えば、『マーシー・マーシー・マーシー』のようなファンキー盤や、(実質的リーダーはマイルス・デイヴィスとはいえ名義上はキャノンボールの)『サムシン・エルス』のような有名盤がある。結論から先に言ってしまえば、キャノンボール・アダレイのサックスだけを堪能したいのなら、特に本盤にこだわる必要はない。むしろ、上記の有名盤やその他の盤(とくにワン・ホーンもの)を聴いた方が楽しめることは明白である。けれども、本盤『アフリカン・ワルツ(African Waltz)』は、バックのオーケストラとの絡みで聴くと、キャノンボールの通常のアルバムとは違う楽しみ方がある。そんなわけで、ある種、異色で違った楽しみのある1枚として捉えられる一枚というわけだ。 実際、1曲目からしてタイトル通り“何か違う(something different)”のである。その違いとは、無論、オーケストラ編成の編曲もの(編曲者にはオリヴァー・ネルソンも名を連ねている)であることによるのだけれど、その一方で、キャノンボールらしさが結構しっかりと出ている。大編成の中で彼のサックスが抑え込まれたり、委縮してしまったりするという事態もありえただろう。けれども、本盤はそうはなってしまわずに、キャノンボール持ち前の流れるような自由奔放さが失われずに編曲の中にうまく組み込まれているといった印象である。この観点から筆者が気に入っているのは、1.「サムシング・ディファレント」、2.「ウエスト・コースト・ブルース」、7.「ブルー・ブラス・グルーヴ」、9.「レター・フロム・ホーム」といったところ。 フルートやコルネット、チューバ、さらにはコンガやボンゴというふうに楽器にもバリエーションがあるのが、一聴したところの“何か違う”部分ではあるのだけれども、8.「ケリー・ブルー」を聴くに至って、その“違い”が確認される。やはり編曲の妙がその“違い”の根本的な源なのである。ためしにウィントン・ケリーの元の演奏と聴き比べてみるとよい。ともあれ、たまには編曲ものの中でうまく生きたサックス奏者の演奏を楽しむというのも悪くない、そう思わせてくれる1枚である。 [収録曲]1. Something Different 2. West Coast Blues3. Smoke Gets in Your Eyes 4. Uptown5. Stockholm Sweetnin' 6. African Waltz7. Blue Brass Groove 8. Kelly Blue 9. Letter from Home 10. I'll Close My Eyes 11. This Here [パーソネル、録音]Cannonball Adderley(as), Nat Adderley(cor), Arnett Sparrow(tb), Arthur Clarke(bs), Bob Brookmeyer(tb), Charlie Persip(ds, per), Wynton Kelly(p), Sam Jones(b), Oliver Nelson(ts, fl), Ray Barretto(bongo, conga), Babatunde Olatunji(bongo, conga)ほか 録音: 1961年2月28日(6., 8.)、1961年5月9日(1.~3., 7., 9.)、1961年5月15日(4., 5., 10.) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓