テーマ:クラシックロック(754)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
ボストンの"完成されたレコード作品"としてのデビュー作 ボストン(Boston)というのは、バンドとしての名称ではあるものの、実質的にはトム・ショルツが作詞・作曲から編曲・プロデュースまでを一手に担う、個人プロジェクト的なグループである。シンセサイザーやコンピューターを一切使用せず(4作目からは使用)、マサチューセッツ工科大出身のショルツの技術の粋を集め、綿密な作業で一つ一つの音を構築していくやり方は、スティーリー・ダンにも通ずる。 さて、ボストンの作品を紹介しようと思いたったのはいいけれど、正直、どれを選ぼうか迷った。人によっては、ボストンは「どれを聴いても大差ない」というが、それも一理ある(別にけなしているわけではなく、どれも質が高いことの裏返しと理解していただきたい)。少なくとも4枚目まで(ベスト盤を除き『ウォーク・オン』までの4作)はそう言えなくもない。筆者の好みで言えば、最初の3枚のいずれかであろうか…。2枚目(『ドント・ルック・バック』)も捨てがたいけど、やはりファーストかサード・アルバム…などと思案しながら、とりあえず、1976年のデビュー作『幻想飛行(Boston)』に落ち着いた。なので、これぞボストンのベスト作でもないし、初めて聴く人には是が非でもこれはと言うわけでもないことをお断りしておく。 本盤の発売当時のライナーには二人が執筆していて、それぞれ次のようなタイトルがつけられていた。 「ボストン―イースト・コーストが生んだ実力は大型グループとして注目を浴びるにちがいない。」 「彼らのサウンドはアメリカン・ロックの未来像を明らかにするもののひとつである。」 これら二つのライナーの評価は、発売当時の捉え方としてはなるほどその通りである。けれども、いい意味でどちらの評者の予想も裏切られたと言っていいと思う。 まずは、「イースト・コースト云々」の方である。70年代、西海岸(ウエスト・コースト)との対比で東海岸(イースト・コースト)を捉えるのは自然な感覚であったろう。しかし、ボストンは西か東かという指標では測りきれない世界の住人だったと今になって見れば思う。それは二つめの方で少し触れられていて、プログレとの関係を視野に入れた評である。後に"アメリカン・プログレ・ハード"と呼ばれた(渋谷陽一氏の命名とされる)ように、主にイギリス発のプログレッシヴ・ロック界が構築したレコード芸術としてのロックという聴き方が定着したからこそ、ボストンのような音作りの発想や下地が生まれてきたのだと思う。つまり、ライブでの再現を意図したレコードとは対極にあり、アルバムとしてだけで世界が完結しうる作品という発想である。レコードの聴き手にこのような発想を抱かせたのは、プログレという音楽の大きな功績だと思う。 さて、その二つめの評での「アメリカン・ロックの未来像」というのも見事に外れた。確かに本作はヒットしたし、その2年後にセカンド・アルバムも出た。しかしその後、ボストンは「8年毎に1アルバム」というとんでもない気長なペースでアルバムを発表するようになり(きっちり8年周期というのは、途中からわざとやっているのではないかという気さえする)、「アメリカン・ロックの未来像」どころか、メインストリームとは違うところでの独自の立場を保つようになった。余談ながら、8年に一度というのは、何某かの天体現象を8年周期で待ちわびるような感覚(?)だが、次回は2010年とされている。いずれにせよ、こうしたペースを保ったからこそだからこそ、ボストンは産業ロック化せず、独自のサウンドを頑なに守りながら、進化を遂げて行くことになったのだと感じる。 この『幻想飛行』はデビュー作ということもあるのか、ややポップな味付けが濃い気がする。とはいえ、メロディーとハーモニーの美しさ、ギター・フレーズのかっこよさ、音の深みという3点セットが見事に調和している。とりわけ、3点目の音の深みについては、噛めば噛むほど味が出る(聴けば聴くほど深みが増す)という言い方がぴったりだと思う。 [収録曲] 1. More Than A Feeling 2. Peace Of Mind 3. Foreplay/Long Time 4. Rock & Roll Band 5. Smokin' 6. Hitch A Ride 7. Something About You 8. Let Me Take You Home Tonight 1976年リリース。 ![]() 幻想飛行/ボストン[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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