テーマ:Jazz(1968)
カテゴリ:ジャズ
親しみやすさも演奏内容も二重丸の好盤 バド・パウエルは1924年ニューヨーク出身のジャズ・ピアニストで、モダン・ジャズのピアノを確立した人物とされる。そんな彼のベスト演奏盤はと訊いても名が挙がらないであろうが、彼の人気盤はと尋ねれば、間違いなく真っ先に名が挙がりそうなのが、本盤『ザ・シーン・チェンジズ(The Scene Changes)』であろう。 無論、だからといって中身が悪いと言っているわけではない。確かに、よく言われるように、バド・パウエルの演奏がより神がかっていたのは、早い時期のものであって、本盤が録られた後期ではない。けれども、キャッチーな1.「クレオパトラの夢」が優れていてかつ冒頭に収められている点、彼の子ども(当時3歳)が映り込んだジャケット写真など、本盤を“一家に一枚”的なメジャー作にしている理由は十分にある。 では、パウエルの演奏自体はどうだったのか。ほとんどを1テイクで録り終えているとのことだから、この日のパウエルは調子がよかったに違いない。でもって、その調子のよさの理由はというと、やはりトリオを組んでいるメンバー、とりわけアート・テイラーのドラミングにあったのではないかと筆者はみている。ブラシを多用し、全体の流れは作りながらも決して出しゃばらない本作での彼のドラミングは、おそらくはパウエルの希望通りだったのではないだろうか。そして、その上をパウエルは気持ちよく駆け抜けて演奏することができた、というわけである。 注目曲としては、有名な1.「クレオパトラの夢」を第1に挙げることになるだろうが、決して本盤はこれだけではない。個人的に好みなのは1.が終わった後に間髪入れず2.「デュイド・ディード」が始まるところ。この緊張感は何度聴いてもたまらない。どうやら、この日のパウエルには神が降臨してきたようで、6.「クロッシング・ザ・チャンネル」、8.「ゲッティン・ゼア」の疾走感は外せない。少し変わったところでは、5.「ボーダリック」という小品はジャケット写真の息子に捧げたものらしいが、神懸かり的な演奏だけでなく、ふと人間らしさを感じる場面だったりする。 余談ながら、初めてバド・パウエルを聴いてみようという人がいたならば、筆者は迷わずこれを勧めることだろう。ジャズ史的には、『ジ・アメイジング・バド・パウエルVol. 1』がいいというのは分かるけれど、いきなり「ウン・ポコ・ロコ」の三連発を聴かされてはたまったものではない。裏を返せば、曲の配置などアルバム作品としての出来がよいこと、さらにこの日は本人の状態が冴えていたという二点によって、この盤こそが親しみやすい初めてのバド・パウエル盤に相応しいという気がする。 [収録曲] 1. Cleopatra’s Dream 2. Duid Deed 3. Down With It 4. Danceland 5. Borderick 6. Crossin’ The Channel 7. Comin’ Up 8. Getting’ There 9. The Scene Changes 10. Comin’ Up –alternate take- [パーソネル、録音] Bud Powell (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds) 1958年12月29日録音。 【CD】ザ・シーン・チェンジズ/バド・パウエル [UCCU-99048] バド・パウエル 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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