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 マムの素 *             青カバ・ウィリアムはかく語る

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2006.12.03
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カテゴリ:創話
                                イラスト sam-deco
 □未確認飛行物体□

 東京オリンピックが終わり、ぽつりぽつりとカラーテレビが見られるようになった頃のお話です。

 わたくしの父は多趣味な人でした。おいおいその趣味についてもお話することになると思いますが、ここでは一つだけ披露しましょう。
 それは魚釣りでした。なにをやっても器用で天才的な勘の持ち主の父は、漁師も一目おくような有名な釣師でした。釣竿やウキなどは釣具屋が買いつけにくるほどの優れた、そしてきれいなもの自ら作りました。
家の裏の空き地というのも恥かしい狭い場所に魚釣のエサとなるエビの生簀まで作っていました。
それは二段になっており井戸水が一日中流れる、小さいけれど本格的なものでした。

 その生簀のエビはどうしたか? なんと父は夜な夜な山奥の貯水池に長い柄のついた大きな網をもって出かけたのでした。当時、-いいえ、きっと今もあると思うのですが- 貯水池の生き物は獲ってはいけないという決まりがあり、父は知り合いの貯水池の門番さんの許可をうけ夜陰にじょうじてエビ獲りをおこなっていたのです。
 まだ小さかったわたくしや妹はこのエビ獲りの共をいつも命じられていました。こども心にこのエビ獲りは恐ろしいものでした。父でさえ怖くて仕方なかったのです。山へ通じる一本道はわたくしたちが乗った、ただ一台の車しかとおりません。たまに見える遠く黄なびた家明かりは、かえって狐火のようで心細くて早く家に帰りたいと願ったものです。

 山の奥、中腹の貯め池はそれはそれは静かで、月の光に水面がキラキラと輝き、それがかえって不気味でした。わたくしの耳には無音の中の音がさかんに囁きかけてきます。黒い木々や叢になにものかが隠れていそうで、振り向くと、それらがさっと翳にひそむようで、そうでなければわたくしがつりこまれていくようで、耳も目も閉じているほうがどんなに気がやすらぐかと思うのでした。

 ある夜のことです。
いつものように真っ暗な山道を貯水池に向い車をとばしていました。空気が澄んでどこまでも同じ黒が続いていました。
 わたしは頭を大きくそらしフロントガラスをとおして空を見上げていました。それは本の数秒のことです。見上げたそこにラグビーボールのような形の物が浮いていたのです。それは青白い光につつまれていました。それはとても神々しく、そして畏しいものに見えました。
 わたくしは口を開くこともできずその「物」を見ていました。それはまるで「ちゃんと見ましたね。ずっと覚えているのですよ」とわたくしにいい終えるようにして、ゆっくりと動きだして山の向こうに消えていったのです。

 たったこれだけのことです。が、わたくしはちゃんと見、忘れることなくちゃんと覚えています。sam-decoさんのイラストはわたくしがバカだったあの頃を思いおこさせてくれました。

                   終

                           創作であることを明記しておきます





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Last updated  2006.12.03 19:36:13
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