カテゴリ:アート
英一蝶(はなぶさいっちょう)を知ったのは、まだ
キリンではなく、エプソンが提供していたころの 「美の巨人たち」を見たときだった。 「布晒舞図」を取り上げていたのだが、その躍動感に 見入ってしまった。それからこの絵師が、幕府ににら まれ、三宅島に遠島になり、そこでも腐ることなく 絵を描き続けたこと。再び赦免により江戸に戻って、 長寿を全うしたことなど、その数奇な運命も興味深かった。 今回の展覧会は、タイトルも「一蝶リターンズ」と ある通り、御赦免300年記念とのこと。生誕とか没後 何年という記念の展覧会はあるが、こういうのは初め てだ。さすが板橋区美術館。ユーモアあふれるネーミ ングだ。ちなみに今回も、それぞれの作品のタイトルも 工夫を凝らしていた。 ![]() さて、お目当ての「布晒舞図」。この絵は、埼玉の遠山 記念館で、一年に一度しか展示されない名品であり、 なかなか見る機会がなかったので、今回は大チャンス である。 ![]() ![]() 新体操のリボン演技のように空中でクネクネとまわる 「さらし」は、まるで龍がうごめくよう。おまけに 踊り子の少女の足腰は、実際の人の動きとは大きく 異なるのであるが、まったく不自然に感じられない。 お囃子や三味線などの人たちの顔や格好も踊り子と 一体感となって躍動感にあふれている。 そのほかの絵もすばらしい。何が素晴らしいかという と、絵に登場する人々の表情だ。みな生き生きとして いるのだ。そして、ユーモアあふれる絵が多いこと。 坊さんの頭に釣り糸で何か垂らして悪戯している光景。 釜が頭にかぶって抜けなくなった人。炎の光背を外して 滝に打たれて修行する不動明王。鳥居に扇子を通す 遊びに熱中しているおとな・・・ 人々が人生を楽しむ姿があちこちに表現されている。 ![]() 「朝とん曳馬図」は湖面にかかる橋を渡る人馬。水面に 映る影も生きた人間のようである。ほのぼのとする 風情。 「張果老・松鷺・柳烏図」の三幅対の掛け軸も好きだ。 黒白の鳥の対比。真ん中にある「瓢箪から駒」の絵は 日本の幻想絵画だ。 18世紀はじめ。師宣が浮世絵の美人画を確立した頃。 まだ春信も北斎も生まれていない時代にこういう絵師が 活躍していたことを再発見した。 これから行く方は、絵の顔の表情を確認するために、 双眼鏡か単眼鏡が必須です。会場でも貸し出してくれ ますが、おもちゃみたいでよく見えませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[アート] カテゴリの最新記事
こんばんは。布晒舞図、こうして図版で見ても仰る通り躍動感に満ちあふれていますね。見事でした。
>人々が人生を楽しむ姿があちこちに表現 苦難の三宅島時代も変わらずに快活な表現が多かったですね。 絵に「そうありたい。」と思いを込めていたのでしょうか。楽しかったです。 (2009年09月29日 22時37分16秒)
NHK日曜美術館で取り上げられていたのを視聴し、英一蝶にとても惹かれました。人間を、人間らしく生き生きと描いているので、生きる元気が沸いてきます。人生を小難しく考えず、一瞬一瞬をそのまま喜び、楽しみとする姿勢が、どんな境遇でも柔軟に生きていく原動力だと感じました。
(2009年10月04日 10時29分04秒)
|