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カテゴリ:今帰仁村
(神アサギ/ウイヌアサギ) 沖縄本島北部の「今帰仁(なきじん)村」の東側に「湧川(わくがわ)」集落があります。「琉球国由来記(1713年)」には今帰仁間切の地頭代が「湧川大屋子」とあり、1738年にこの集落が創設された際に「湧川」と名付けられたと伝わります。「湧川集落」の祭祀行事は北側にある「勢理客集落」の「勢理客ノロ」の管轄になり「勢理客・運天・上運天」の3つの集落と共に祭祀が執り行われるようになりました。「湧川公民館」の敷地に「ウイヌアサギ」と呼ばれる「神アサギ」があり五穀豊作の感謝と子孫繁栄を祈願する「ウプユミ(大折目)/ワラビミチ」の際に「勢理客ノロ」やカミンチュ(神人)により拝されています。 (神アサギの内部) 「神アサギ(ウイヌアサギ)」はノロや神人による祭祀が行われる聖域で、内部にはタモトギとウコール(香炉)が祀られています。現在も大切に継承されている「ウプユミ(ワラビミチ)」は「今帰仁村」の年中行事で最も重要な祭祀で、旧盆あけの亥の日に執り行われます。まず「勢理客ノロ」や神人を「湧川集落」の「神アサギ(ウイヌアサギ)」で待ち「勢理客ノロ」と神人が「神アサギ(ウイヌアサギ)」に向かう前に集落の子供達が太鼓を五回を打ちます。そして「勢理客ノロ」と神人のウガン(御願)が終わると、再び太鼓を五回打ち鳴らし「神アサギ」での祭祀は終わります。 (新里屋) (新里屋の敷地内にある祠) (祠内部の火の神と女神図像) (新里屋の仏壇) 次に「勢理客ノロ」と神人は「神アサギ」の南西側にある「新里屋」でウガン(御願)を行います。「新里屋」は「湧川集落」の発祥に関わった「根屋(ニーヤ)」であり「北山王統」の血筋を継ぐ一門だと伝わっています。「新里屋」の敷地内には祠があり内部には三組の霊石/石造りウコール(香炉)、更に一組の女神図像/金属製ウコール(香炉)が設置された拝所となっています。「天孫氏二十三世」の弟の長男が「孫太子(開山長老)」六男が「今帰仁王子」で、その長男である「兼松金王」が「三代北山王」を継ぎました。この「三代北山王」の跡目を代々継承してきたのが「新里一門」となります。因みに「孫太子(開山長老)」が「新里屋」を建てた人物だったと伝わっています。 (新里屋の仏壇) (新里屋の仏壇) (新里屋の仏壇) (新里屋の仏壇) 「新里屋」の仏壇には図像が3面、位牌が8柱、ウコール(香炉)が10基祀られています。向かって左から「千手観音菩薩図像」「家族図像/北山大按司の位牌」「開山長老図像/孫太子大君の位牌」「ミルク(弥勒)像」「今帰仁之子思次郎/今帰仁按司樽金/北山王子松金/北山王亀寿の位牌」「思次良湧川按司/長男樽金湧川按司/北山世主/帰真/霊位/樽金湧川按司/養子の位牌」「湧川奴留之元祖の位牌」「新里大主の位牌」「新里筑登之/新里親雲上/新里筑登上/新里里之子/新里親雲上の位牌」「新里新光/新里新松/カマダ/新里親雲上/次良新里親雲上/武樽新里/新里親雲上の位牌」がそれぞれ祀られています。更に仏壇の1番左側には「勢理客ノロ」が祭祀に使う弓があり、1番右側にある火の神には霊石とウコール(香炉)が2基づつ祀られています。 (新里屋の火の神) (奥間アサギ/ヒチャヌアサギ) (奥間アサギの火の神) 「新里屋」での御願(ウガン)を終えた「勢理客ノロ」と神人は次に「湧川公民館」の脇にある「奥間アサギ(ヒチャヌアサギ)」を拝し、集落の子供達により太鼓が五回打たれた後に「勢理客集落」へ向かいます。「奥間アサギ」は「湧川集落」の「神アサギ」ではなく「勢理客ノロ」の男方の旧家で、一般的な「神アサギ」とは異なり小屋の内部に旧家の火の神が祀られています。かつて「湧川集落」では神人の跡継ぎがなくなり、祭祀の継承が絶たれる運命にありました。その時に男方に繋がりを持つ「勢理客ノロ」の管轄になったと伝わっています。そのため「湧川集落」では「神アサギ」に類似した「奥間アサギ」が現在でも残され、ウガン(御願)の対象として大切に拝されているのです。
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最終更新日
2022.11.12 21:30:34
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