菩提樹とは
昨年のちょうどこの時期、静岡県内の自然ふれあい施設(県立森林公園等)の植物を調査して回っていた。浜松の竜頭山を中心とした県立公園「天竜の森」を調査した際、いち早く真っ赤に染まり、モミジ以上に存在感を示していたのが科木(シナノキ)だ(11/10/18撮影)。シナノキは菩提樹(ボダイジュ)の仲間で、ほぼ日本中に分布するシナノキ科の落葉高木。葉っぱは少しゆがんだハート形をしていて、5月から6月にかけて、芳香を放つ黄緑色の小さな花をたくさんつける。シナノキの樹皮は強靱で、繊維を使ってロープや布を作るのに使われた。 ところで、菩提樹といえば、「お釈迦様が悟りを開いた木」だと思い当たる方も多いのではないだろうか。ところがこれは、日本の菩提樹とは別物なのだ。お釈迦様が悟りを開いたのはインドのブッダガヤ。ここの菩提樹は、インド菩提樹といって、インド原産のクワ科の常緑高木である。 日本の菩提樹は、中国原産のシナノキ科の落葉高木で、インド菩提樹とはまったく種類が異なる。インド菩提樹は熱帯植物で寒さに弱いため、中国では葉っぱのよく似たシナノキ科の木を菩提樹と称したものだといわれている。それが日本に入ってきた菩提樹である。しかし、「菩提樹」という名から、お寺の庭などに植えられていることも多い。お釈迦様のインド菩提樹とは別物だということを覚えておく必要があるだろう。