カエデと楓
いよいよ紅葉のシーズンが近づいてきたが、「楓」という植物ををなんと読むかご存じだろうか。「カエデ」と読んだ方は半分不正解。この字は訓読みでは「かえで」だが、植物の名前としては音読みの「フウ」を指す。 カエデもフウも、紅葉が美しい植物だが、カエデはカエデ科、フウはマンサク科と、まったくの別の植物だ。もともと漢名の楓はこのフウをさしていたが、中国からこの名が渡来してきたときに、葉っぱに切れ込みがあって紅葉が美しいことからカエデと間違えられてこの字にカエデの読みを当てはめたと考えられている。 江戸時代になって本物のフウが渡来したときに、こちらは音読みのフウを和名にしたというわけだ。 フウは中国原産のマンサク科の落葉高木で、日本には江戸時代中期に渡来したとされる。葉は浅く3列し、花は葉の展開と同時に4月頃咲く。夏を過ぎるといがぐりのような果実がぶら下がる(1枚目)。紅葉が美しく、同じ仲間のモミジバフウとともに街路樹などにもよく利用される。モミジバフウは、その名の通りモミジのように葉が5~7裂するのが特徴だ(2枚目)。 (あと3枚) カエデ科のカエデには、一般的なイロハカエデのほかに、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、トウカエデ、オオモミジなど様々な種類がある。通常はこれらを総称して紅葉(モミジ)というが、さらに広く、紅葉する植物を総称してモミジという場合もある。 ところで、「モミジ」と「カエデ」の違いをご存じだろうか? じつはこれ、植物分類上はまったく同じもので、カエデ科の植物で紅葉(モミジ)することから、カエデ=モミジと呼ばれる。代表的なイロハカエデは人によってはイロハモミジとも呼ばれるが、これはまったく同じものだ。 ちなみに、静岡市の街路樹には、フウやモミジバフウ、トウカエデ(3枚目)など紅葉の美しい木が多数使われているが、これらの木は紅葉を待たずに、ほとんどが10月のうちに丸裸にされてしまう。落ち葉の苦情に対処するためにはやむを得ないことだろうが、残念なことだ。