カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
誘蛾灯英語テストは三十点 花火背に夢中で描いた父と母 夏の果明日は来るなと神頼み すぐ後ろママの姿は入道雲 箱庭の四人家族の無表情 日盛りのマック課題図書のあらすじ 一心に日焼けの鱗はぐ子かな
プレバト俳句。 お題は「夏休みの宿題」。 ◇ 勝俣州和。 誘蛾灯ゆうがとう 英語テストは三十点 学校からの帰路、 (作者いわく、夏休み中の「塾の帰路」だそうです) 暗い夜の誘蛾灯を見たときの不安な気持ち。 この季語は動きようがなく、 その意味でも模範的な出来映え。 ◇ 森口瑤子。 箱庭の四人家族の無表情 季語の「箱庭」は、 基本的には"人事"を詠むためのものでしょうが、 箱の中の"自然"を詠んでこそ夏の季語なのだろうし、 そこで《涼しさ》や《楽しさ》を味わうのが本意だと思います。 しかし、この句の場合は、 ほとんど心理療法的な発想で「箱庭」を描いており、 涼しげでもなければ楽しげでもなく、 なかば無季の句のようでもあるし、川柳のようでもある。 独創的で面白いとは思うけれど、 およそ"俳句らしさ"からは遠い作風だし、 かなり特殊なので、 一般的な俳句観から逸脱したところで評価するしかない。 なお、詠み手によっては、 助詞を「四人家族 は 無表情」とするでしょうが、 やはり写生に徹するためには、 わたしも「は」でなく「の」にするのが正解だなと思う。 ◇ キスマイ横尾。 日盛りのマック 課題図書のあらすじ いつもの「AのB/CのD」の対句です。 "マックで宿題"ってのは、 若い世代の句材としては凡庸じゃないかしら? 梅沢は「オシャレだ」と言ってましたけどね!(笑) とはいえ、 温暖化した都市の晩夏と、 冷房の効いたファストフード店を対比させ、 そこで要領よく宿題を片付ける子供を、 シュールにアイロニカルに描いているともいえる。 実際、 マックもエアコンも温暖化もスマホもなかった時代から見れば、 これはほとんどSFのような世界でしょうから、 その意味では、すごく現代的な人事詠かもしれません。 ◇ 弓木奈於。 花火背に夢中で描いた父と母 花火観る父母ちちははを描く花火背に(添削後) 原句は、 「花火を背にしている父母を」描いたのか、 「花火を背にしている自分が」描いたのか、 位置関係が分かりにくい。 しかし、 位置関係を説明するためとはいえ、 季語の「花火」を2度使う添削も煩雑です。 破調の17音なら、 花火に照らさるる父母ふぼの顔描けり と出来ます。 ◇ 鬼越トマホーク坂井。 夏の果 明日は来るなと神頼み 夏果の宿題 明日よ来るな嗚呼(添削後) 助詞の「は」ってのは厄介で、 「象は長い」と書けば「象」が主語になりますが、 「象は鼻が長い」と書けば「鼻」が主語になるのよね。 それと同じく、 この句は「明日」が主語のようにも見えるし、 (たとえば「明日は《借金取りが》来るな」のように) 別の主語が省略されているようにも読み迷わせる。 これを避けるには、 「明日が来るな」or「明日よ来るな」と書くしかない。 … それはともかく、 こういうことを神様に願うってのは、 のび太=ドラえもん的な世界観を匂わせるし、 コワモテの外見に似合わず純粋(…というか幼稚)なのかな。 なお、 夏休みの終わりは暦の上では秋なので、 そこで「夏の果て」を用いるのも間違いだし、 のみならず、この季語の本意は、 過ぎ行く夏を惜しむことにあるのだから、 添削句を字面だけ見れば、 「ああ夏が終わってしまう! 永遠に明日が来ないでほしい! 私はこの宿題をいつまでもやっていたいのだ!」 との意味に読めてしまいます。 ◇ 尾上右近。 すぐ後ろ ママの姿は入道雲 入道雲 宿題迫るママみたい(添削後) 季語を比喩にしてしまう初心者の過ちですね。 こういう俳句に対して、 「雲のような母」ではなく、 「母のような雲」に逆転すれば解決するってのも、 もはや機械的な添削手法なのだろうなぁ…(笑) ◇ 梅沢富美男。 一心に日焼けの鱗はぐ子かな 宿題は遅々と日焼けの鱗剥ぐ(添削後) 最近の梅沢のボツ句に共通するのは、 情報量が少なくて、内容が薄いってこと。 たとえば、 剪定や鋏の音の霏々として(=剪定してるだけ) 水筒の囀り満たし一息に(=水筒の水を飲んでるだけ) せせらぎの1/F夕蛍(=川に蛍が飛んでるだけ) …ことごとく内容が薄いのよね(笑)。 ごくありきたりな内容を、 俳句っぽい調べと言い回しにしたにすぎない。 まあ、上の3作にくらべれば、 今作には、ゆったりした味わいもあって、 だいぶマシな気はするし、 一概に情報量が多けりゃいいってもんでもないけど、 所詮は、この句も、 「子供が日焼けの皮を剥がしてる」だけなので、 中身が薄いといわれても仕方がないですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.04 15:51:29
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