手入れをする相手は生き物、それに対する道具は、無機質な金属。しかし、その道具を扱うのは生身の人間。そのとき、無機質な金属であるけれど打ち練りあげた刃物は其処に何かが存在する。それが、粘りだと思う。ハイス鋼や青でなく白の粘りが程いいように思えるのは私だけだろうか。
様々の人為な理由で枝葉に刃を入れるとき、唯一相手に敬意を払い互角に戦い、自然を従い占める行為としてふさわしい道具にハイスは余にも脅威な刃物として認識している。包丁でさえ焼き戻しして粘りをだすというのに硬さを追求するのは如何なものだろうか。
先日、鉈の砥をお願いしている平塚枡屋さんで聞いた話。ハイス鋼を使った包丁の話を伺った。包丁の・・・・包丁に限らず鋼と地金の関係を聞いた。それは、刃物がある環境に応じて刃物の状況が変るのだという。つまり、反り曲がりだ。
出来上がった製品は、すぐ出荷せずしばらく寝かせるのだという。なぜかというと鋼つけ後の鋼は、様々な気圧や湿度といった微気象が影響する。例えば、展示されるときの照明の温度でも影響される。
あるとき、ハイス鋼の包丁が薄っすら二枚になっていることに定期的に製品を拭き整えている時気が付いたという。それほどデリケートだという。おそらくは、通常の保管であればこの様なことにはならなかったであろう。
現在、製品化され、展示されたものは、3年以上前のものだという。しかも、買い求めた後は、反りを調整して引き渡すという。それは、ホームセンターでは、絶対にありえないこと。「イチマツ」といい、「堺太助」といい次々に鋏が無くなって行く。
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