企業年金積立金が破綻の原因に?
JALの再建計画でも重くのしかかるのが、企業年金だ。日経新聞によると、2009年3月期末の主要上場企業の積立不足額は総額13兆502億円と、前期末の2倍に急増した。2003年3月期末(20兆8,191億円)以来、6年ぶりの高水準になった。昨秋以降の株価急落などで年金資産が大幅に減少した。積み立て不足の多い企業 (億円、▲は不足、マイナス) 2009年3月 2008年3月 増減日立製作所 ▲6,866 ▲4,176 ▲2,690NTT ▲5,763 ▲1,519 ▲4,244東 芝 ▲5,446 ▲4,473 ▲973ホンダ ▲4,566 ▲3,722 ▲843パナソニック ▲4,188 28 ▲4,216三菱電機 ▲4,039 ▲2,546 ▲1,492富士通 ▲4,001 ▲1,901 ▲2,099トヨタ自動車 ▲3,929 ▲990 ▲2,939NEC ▲3,483 ▲2,266 ▲1,217日本航空 ▲3,314 ▲3,237 ▲77積み立て不足の拡大は、株価低迷などで2009年3月末の年金資産が31兆7,325億円と前期に比べ19%減少したのが主因だ。これは、年金資産と退職給付引当金の合計額が、将来支払う年金や退職金の必要額(退職給付債務)の現在価値に比べ、どれだけ足りないかを示すものです。判りやすく説明すると、 「積立不足」とは将来の退職金支給に備えて「現時点で積み立てておくべき金額」と「実際に積み立ててある金額」との差額のことです。実際の積立の方が多ければ問題ないのですが、ほとんどが少なくなっていますので一般的には「積み立て不足」と呼んでいます。日本航空の場合、この積み立て不足が、2009年3月末で3314億円あるということです。日本航空の再建については、今後の必要資金や現在の有利子負債額が話題に上りますが、実は、日本航空はこのような話題に取り上げられない債務も抱えています。 当然ですが、未認識退職給付債務は、金融機関からの借り入れなどである有利子負債(日本航空の場合、2009年3月末で、8000億円)とは全く別の債務です。さらに、2011年6月目標に適用を進めている国際会計基準(IFRS)では、未認識退職給付債務について数理計算上の差異を一括して償却する方向で見直しを進めており、確定給付制度の退職給付会計の資産と給付債務の差額を、毎期、貸借対照表と損益計算書に全額計上する方向にあります。現行の日本の会計基準では、数理計算上の差異を長期間にわたり償却することになっており、I国際会計基準審議会(ASB)による見直しが、財務諸表に及ぼすインパクトは大きくなります。日本の大企業は、国際会計基準への移行に対応せざるを得ないので、日本航空の有価証券報告書に与えるインパクトはさらに甚大になります。再建計画で、国際会計基準導入が貸借対照表や損益計算書へ与えるインパクトも当然、考慮されるでしょうが、これは注目に値する論点です。日本企業の間で、確定給付年金を廃止する動きが強まるでしょう。 JALでも、企業年金を直ぐにでも減額したいのだが、改定には年金受給者の3分の2以上の同意がないと出来ない。退職者にとっては最早会社へのロイヤリティ(忠誠心)よりは、既得権の方が重要で同意が得られる可能性はほぼゼロに近い。これを精算するには、倒産するしかないので、ナショナルフラッグを救済するのであれば、公的資金注入とM&Aしかない。