リーダーシップとマネジメント理論(1)
昨日のピーターの法則は人事施策を考える上で、一つの参考にはなるが、企業またはプロジェクトのリーダーが知っておくべき、常識が幾つかあるので、これから数回に渡って特集してみる。先ず最初に、リーダーたるべき人は部下又はプロジェクトメンバーがどんな動機(Motivation)で動くのかという人間本来の特性を知る必要がある。これらを知るための学問として、人間行動学がある。代表的な学者とその理論を簡単にまとめる。1.マズローの欲望5段階説アブラハム・マズロー(1908年~1970年A.H.Maslow アメリカの心理学者)は,彼が唱えた欲求段階説の中で,人間の欲求は,5段階のピラミッドのようになっていて,底辺から始まって,1段階目の欲求が満たされると,その次の1段階上の欲求を志すというものです。 人間の欲求は,もっとも原始的な生理的欲求から始まって安全の欲求,親和の欲求,自我の欲求と段階を経て,最も崇高な欲求は自己実現の欲求だと言う。生理的欲求と安全の欲求は,人間が生きる上での衣食住等の根源的な欲求,親和の欲求とは,他人と関りたい,他者と同一化したいなどの集団帰属の欲求で,自我の欲求とは,自分が集団から認められ,尊敬されることを求める認知欲求のこと,そして,自己実現の欲求とは,自分の能力,可能性を発揮し,創造的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求のことです。 リーダーはこの人間の欲求構造を知った上で、メンバーのモチベーションを常に高く維持できるように目標設定をし、ジョブアサインを行う必要がある。2.ハーツバーグ2要因理論次に1966年に、アメリカのウェスタン・リザーブ大学の心理学教授であるハーツバーグ・フレデリック(HerzbergFrederic)が唱えた理論がある。この理論は、一般的には「動機付け要因論」「動機付け衛生理論」「2要因理論」などとも呼ばれています。 彼はピッツバーグ市のさまざまな組織で働く約200人の技師と会計士に面接し、過去の職務経験において「際立って良い」感じを受けた出来事と、「際立って悪い」感じを受けた出来事の2つを語ってもらった。この結果を内容分析の手法で解析し、どのような要因が高感情(満足感)と低感情(不満足感)経験の源泉となっているのかを明らかにした。a.動機づけ要因=人々に満足を与える要因 Motivator達成,承認,仕事そのもの,責任,昇進,成長などが含まれる。b.衛生要因=人々に不満を起こさせる要因 Hygiene Factor会社の政策と管理,同僚との関係,監督者との関係, 部下との関係、個人生活、作業条件、 身分、給与、保障などが含まれる。ハーツバーグらは、上記動機付け要因と衛生要因に人間の意欲に関係する要因を分類し、勤 労意欲を盛り上げるためには、組織は、達成、承認、仕事そのものといった人間の持つ「高次の欲求」に働きかける必要があることを示唆している。この働きかけの方法として、ハーツバーグとフォードは、「職務充実」の必要性を力説した。3.マグレガーX理論、Y理論同じく1960年代に、ダグラス・マグレガーが著書『企業の人間的側面』の中で、X理論、y理論を発表した。著書の中で、権限行使と命令統制による経営手法をX理論として批判し、統合と自己統制による経営が、将来の良い経営手法となると主張した。要約すると、X理論とは、単純に言うと性悪説である。人間は生来怠け者でできるだけ仕事をしたくないと思っている。従って大抵の人間は統制や命令、あるいは処罰で脅されなければ企業目標の達成に十分な力を出さない。また、普通の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、安全を望むという考えである。 一方、Y理論は性善説である。人間は生来仕事が嫌いということはなく、条件次第で仕事は満足感の源にも懲罰にもなる。従って統制や命令、処罰だけが企業目標の達成に力を発揮する手段ではなく、やりがいのある仕事を与えれば人は自ら働く。また、普通の人間は条件次第で責任を引き受けるばかりか、自ら責任を取ろうとするという考えである。 経営者が短期的な成果を追いかけると、X理論的な方向を目指したがり、厳しいノルマを課し、裁量は与えず、目標を達成できなかったらペナルティで追い立てるようになるが、そんなやり方では、長期的に考えると会社がおかしくなってしまう。マググレガーは、Y理論で経営を行っている経営者のほうが高い成果をあげていると主張している。4.ウイリアム・オオウチZ理論1970年代後半になると、日本の高度経済成長を見て、アメリカで、「なぜ日本はこんなに強いのか?」という疑問が強まり、日本的経営が熱心に研究され始めた。その中に、スタンフォード大学のウィリアム・G・オオウチという教授がいました。彼は70年代後半、日本的経営の成功を解き明かそうとして研究を進めてきました。結果、新生Z理論を導き出し、『セオリーZ』という論文を上梓したのです。研究の過程で彼は、日本企業には規律がしっかりとあること、その一方で権限委譲もしている、終身雇用制度がしっかりとできあがっている。日本企業のこのような点に着目しました。オオウチ氏は日本経営の特徴として、「終身雇用」「コンセンサス重視」「集団責任制」などをあげています。日本経営はX理論と、Y理論の両方の良いところを集めたものなのではないか、といったことをオオウチ氏が明らかにしていったのです。、